アダム・アシュリー＝クーパー

1984年 3月27日、オーストラリアのシドニーに生まれたアダム・アシュリー＝クーパーは、ラグビーユニオンにおいてフルバック、ウィング、アウトサイドセンターなど、バックスリーとセンターポジションの複数で高い能力を発揮した選手です。身長182cm、体重98kgという体格を活かし、その多彩なプレースタイルで国際舞台や各クラブチームで重要な役割を担いました。

彼は元ワラビーズおよびブランビーズでプレーしたグレアム・ボンドの甥にあたり、また遠い祖先にはイングランド貴族であるシャフツベリ伯爵家の第6代当主、クロプレイ・アシュリー=クーパー伯爵がいるという家系の持ち主でもあります。

アシュリー＝クーパーのキャリアはニューサウスウェールズ州セントラルコーストのオウリンバでのジュニアラグビーから始まりました。バークレイ・ヴェール・ハイスクール卒業後、2004年にはワラビーズの若手育成プログラムに選ばれ、南アフリカへの遠征に参加し経験を積みます。翌2005年にはスーパーラグビー（当時のスーパー12）のブランビーズに加入。このシーズンは怪我の影響で出場機会は限られたものの、印象的なプレーを見せ、すぐにオーストラリア代表の21歳以下チームに選出されます。同年にはフル代表であるワラビーズの一員としてトライネイションズの南アフリカ戦で国際舞台への第一歩を踏み出しました。

ワラビーズでは長きにわたり主力選手として活躍。特にライバルであるニュージーランド代表、オールブラックスとのテストマッチでは、2010年に通算6トライ目を記録するという偉業を達成しました。これは、オールブラックス戦で6トライ以上を挙げたオーストラリア代表選手としては、デイヴィッド・キャンピージ、マシュー・バークに次ぐ史上3人目の快挙でした。

国際的なキャリアのハイライトの一つとして、ラグビーワールドカップ2015での活躍が挙げられます。この大会期間中には、末期がんと闘う友人が「ワールドカップでオーストラリア代表のプレーを見たい」という夢を持っていたことを知ります。その友人をウェールズ戦に招待し、ワラビーズが見事勝利を収めた後、アシュリー＝クーパーは試合直後のユニフォーム姿のまま、病床の友人の元へと駆けつけ、勝利を分かち合いました。このエピソードは、彼の選手としての偉大さだけでなく、人間的な温かさを示すものとして多くの人々に感動を与えました。

2015年のラグビーワールドカップ終了後、彼は活躍の場をフランスのトップ14リーグに移し、ユニオン・ボルドー・ベグルでプレーしました。その後、2017年6月には日本のトップリーグに挑戦することを発表し、神戸製鋼コベルコスティーラーズに加入。神戸製鋼ではチームの中心選手として活躍し、2018-19シーズンにはチームのトップリーグ優勝に大きく貢献しました。その功績が認められ、同シーズンのトップリーグベスト15にも選出されています。

日本の地で素晴らしい成果を挙げた後、彼は再びワラビーズでのプレーを目指すため、2019年に神戸製鋼を退団し、スーパーラグビーのワラターズに復帰しました。一度は代表から退いていましたが、2018年にはイタリア戦で再びワラビーズのジャージを着用しています。

現役キャリアの最終章はアメリカ合衆国でした。2021年にメジャーリーグ・ラグビー（MLR）のLAギルティニスに加入し、同年8月に現役引退を発表。引退後はすぐにLAギルティニスのコーチングスタッフに加わり、アシスタントコーチとして新たな道を歩み始めています。

アダム・アシュリー＝クーパーは、その多才なポジション適応能力、国際舞台での長年の経験、そして人間味あふれるエピソードから、記憶に残るラグビー選手としてその名を刻んでいます。

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