アッシジ、フランチェスコ聖堂と関連修道施設群

アッシジ、フランチェスコ聖堂と関連修道施設群：イタリアの聖地を訪ねて

イタリア中部、緑豊かなウンブリア州に位置するアッシジは、人口約二万人の小さな町です。しかし、この町は聖フランチェスコの生誕地として知られ、カトリック教会における重要な巡礼地として世界中から人々が訪れます。 薄いピンク色の石材を用いた美しい建物が立ち並び、独特の景観を形成しているのも特徴です。

歴史の重み：古代から現代まで

アッシジの歴史は古く、ローマ帝国時代には既に都市として栄えていました。当時、約2300メートルに及ぶ城壁に囲まれた街は、政治・経済の中心地として重要な役割を果たしていました。現在でも、紀元前一世紀頃に建てられたミネルバ神殿などの遺跡を見ることができます。

ローマ時代以降、11～12世紀にかけては、商人の開拓や貴族による教会建設などが盛んに行われ、街は発展を続けました。ウンブリア地方独特の建築様式を取り入れた建造物が多く誕生し、人口増加に伴い、城壁の拡張工事が1260年と1316年に実施されました。この時代には、後に世界遺産となるサン・フランチェスコ聖堂やサンタ・キァーラ修道院も建設されました。

14世紀以降も、城壁の拡張や公共施設の整備が進められましたが、ペルージャとの戦争などによる治安不安定な時期もありました。15世紀後半にはサン・フランチェスコ聖堂前に広場が造られ、17～18世紀にかけてはバロック様式の宮殿が数多く建設されるなど、アッシジは発展を続けました。1818年にはサン・フランチェスコ大聖堂地下から納骨堂が発掘され、1954年には保全計画が策定され、アッシジは保全地域に指定されています。

主要建造物：聖なる空間と芸術の宝庫

サン・フランチェスコ聖堂

アッシジのフランチェスコを称えるために建設されたサン・フランチェスコ聖堂は、1228年に教皇グレゴリウス9世によって着工、1253年に完成しました。聖フランチェスコの弟子、エリアの尽力も大きかったと言われています。

斜面に建てられた聖堂は、上層がゴシック様式、下層がロマネスク様式と異なる建築様式が用いられています。内部には、チマブーエ、ジョット、マルティーニといった巨匠たちのフレスコ画が数多く残されており、中でもジョットによる聖フランチェスコの生涯を描いたフレスコ画は必見です。1997年の地震で大きな被害を受けましたが、修復を経て現在もその姿を見せています。

サンタ・キァーラ修道院

サンタ・キァーラ修道院は、聖フランチェスコの精神を受け継いだクララによって建てられた女子修道院です。1257年に完成した修道院には、クララの遺骸が安置されています。ピンクと白の縞模様が特徴的な建物は、聖フランチェスコゆかりの場所として重要な役割を果たしています。

世界遺産登録基準

アッシジ、フランチェスコ聖堂と関連修道施設群は、以下の世界遺産登録基準を満たしていることから、世界遺産に登録されました。

(1) 人類の創造的才能を表現する傑作
(2) ある期間を通じてまたはある文化圏において、建築、技術、記念碑的芸術、都市計画、景観デザインの発展に関し、人類の価値の重要な交流を示すもの
(3) 現存するまたは消滅した文化的伝統または文明の、唯一のまたは少なくとも稀な証拠
(4) 人類の歴史上重要な時代を例証する建築様式、建築物群、技術の集積または景観の優れた例
(6) 顕著で普遍的な意義を有する出来事、現存する伝統、思想、信仰または芸術的、文学的作品と直接にまたは明白に関連するもの

アクセス

ローマやフィレンツェから鉄道を利用できます。ローマからは約2時間です。また、ローマ、フィレンツェ、ペルージャからは定期バスも運行しています。

参考文献

石鍋真澄『アッシジの聖堂壁画よ、よみがえれ』小学館アートセレクション、2000年
「アッシジ 貧困の聖者が生きた緑の丘と静かな時間」ニューズウィーク日本版(2001年8月15日/22日号) TBSブリタニカ

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