アッピウス・クラウディウス・ルッスス

アッピウス・クラウディウス・ルッススは、共和政ローマのパトリキ、すなわち貴族出身の政治家であり、軍人でもありました。彼の生きた時代は紀元前3世紀であり、共和政ローマが勢力を拡大していく時期にあたります。

ルッススの父は、紀元前307年に執政官を務めたアッピウス・クラウディウス・カエクスです。カエクスは、ローマの重要なインフラであるアッピア街道の建設者として知られています。ルッススは、名門クラウディウス氏族の一員として、幼い頃から政治や軍事の世界で活躍することが期待されていました。

紀元前268年、ルッススはプブリウス・センプロニウス・ソプスとともに執政官に就任しました。執政官は、共和政ローマにおける最高の官職であり、国家の運営や軍事指揮を担いました。ルッススは、ソプスとともにピケヌムとの戦いで勝利を収めました。ピケヌムは、イタリア半島東部に位置する地域であり、ローマの勢力拡大にとって重要な拠点でした。この勝利を讃え、ルッススは凱旋式を実施する栄誉を得ました。凱旋式は、ローマにおける最高の栄誉であり、勝利した将軍が軍隊を率いて市内をパレードする儀式です。

また、ルッススはアリミヌム（現在のリミニ）とベネウェントゥム（現在のベネヴェント）に植民都市を建設しました。植民都市は、ローマ市民を移住させ、新たな領土を安定させるための重要な政策でした。これらの都市は、ローマの勢力圏を拡大し、経済的な発展に貢献しました。

しかし、ルッススは1年の任期を完了する前に死去しました。彼の死は、ローマにとって大きな損失であり、彼の功績は後世に語り継がれました。

カピトリヌスのファスティや354年のクロノグラフィによれば、彼のコグノーメン（第三名、家族名）はルッススとなっています。しかし、ヒダティウスの年代記やパスカルの年代記では、おそらく間違いと思われますが、「ルフス」とされています。

逸話として、ガイウス・スエトニウス・トランクィッルスは、「クラウディウス・ドルススは冠を着けた彼の像をフォルムの一つに建て、クリエンテスを通じて全イタリアを支配しようとした」と述べていますが、後世の歴史家によれば、これはルッススの事であると言われています。この逸話が事実であれば、ルッススは非常に野心的な人物であったと考えられます。

アッピウス・クラウディウス・ルッススは、共和政ローマの初期において、政治家、軍人として重要な役割を果たしました。彼の功績は、ローマの勢力拡大と発展に大きく貢献し、彼の名は歴史に刻まれています。

参考資料

クラウディウス氏族
共和政ローマ執政官一覧
* 凱旋式のファスティ

もう一度検索