アップルマート

株式会社アップルマート

かつて日本の首都圏でコンビニエンスストアチェーンを展開していた株式会社アップルマート（英称：APPLE MART）は、東京都港区に設立された企業でした。その事業は主にフランチャイズ方式で拡大し、一時は社団法人日本フランチャイズチェーン協会の正会員でもありました。

沿革

アップルマートの歴史は、1982年3月11日に幕を開けます。食料品の販売を手がけていた企業「泉屋」のコンビニエンス部門として、株式会社アップルマートが設立されました。設立後間もない同年5月21日には、東京都三鷹市に初の直営店舗となるマルタカ店をオープンし、事業を本格的に開始しました。

その後、アップルマートはフランチャイズ展開を成長戦略の核に据えます。設立から約半年後の1982年10月21日には、記念すべき第一号のフランチャイズ加盟店が営業を開始しました。これにより、自己資本だけでなく、外部の経営資源を活用した店舗網の拡大が可能となりました。

事業形態の多様化も進められました。1986年4月21日には、従来のコンビニエンスストアよりも小規模ながら、特に弁当販売に力を入れた「アップルミニ」の一号店を東京都中野区に出店。都市部の狭小なスペースや特定のニーズに対応する試みでした。さらに1991年には、東京都中央区の日本橋と京橋という商業集積地に、より一層コンパクトなコンビニエンスストアの可能性を探る実験店舗を展開しています。

会社の運営体制にも変化がありました。1995年12月には、本社所在地を東京都練馬区中村北1丁目9番10号へ移転しています。

店舗網の推移

アップルマートの店舗数は、順調に増加しました。

事業初期の1983年6月時点では、埼玉県に3店舗、東京都に10店舗を展開しており、合計13店舗でした。
フランチャイズ展開が本格化した後の1989年2月には、直営店は2店舗にとどまる一方、フランチャイズ加盟店は45店舗にまで増加し、総店舗数は47店舗となりました。
最も店舗数が多かった時期の一つである1993年7月時点では、東京都内に42店舗、埼玉県内に8店舗、神奈川県内に1店舗を構え、合計51店舗に達しています。

しかし、その後のコンビニエンスストア業界の競争激化などの影響もあり、店舗数は減少傾向を見せます。経営権の変動が生じた直前の2005年9月時点では、都内を中心に41店舗を運営する状況となっていました。

経営権の変動とその後

アップルマートの経営に大きな転機が訪れたのは、2005年のことでした。同年9月1日、当時の代表取締役であった渡部吉高氏が保有していたアップルマートの全株式を、豆腐などの製造・販売を行う株式会社篠崎屋へ5000万円で譲渡する契約が締結され、アップルマートは篠崎屋の子会社となることが発表されました。

しかし、この株式譲渡契約は短期間のうちに破綻します。わずか一ヶ月後の2005年9月30日、契約に含まれていた解除条項に抵触する事実が明らかになったとして、株式譲渡契約は解除されることとなりました。これにより、一度篠崎屋へ渡った全株式は再び渡部吉高氏に返還されるという異例の事態となりました。

この経営の混乱を経て、アップルマートの事業運営体制は大きく変化します。2006年4月、アップルマートのフランチャイズ事業全体が株式会社逸品へ業務委託されることになりました。この業務委託以降、アップルマートという法人としての事業実態や、残存していた店舗がどうなったのかといった情報は、公式には確認が難しくなっています。

提供サービス

アップルマートの店舗では、顧客の利便性を高めるための多様なサービスを提供していました。一般的な商品販売に加え、主なサービスとして以下のものが挙げられます。

コピーサービス: 書類などの複写ニーズに対応していました。
DPE受付: 写真フィルムの現像や焼き付けの取次ぎを行っていました。
クロネコヤマト宅急便サービス: 宅配便の荷物受付を行い、発送サービスを提供していました。
* クリーニング取次ぎ: 衣料品などのクリーニングの受付・引渡しサービスを行っていました。

これらのサービスは、地域の生活拠点としてのコンビニエンスストアの役割を果たす一環でした。

株式会社アップルマートは、コンビニエンスストア業界における中小チェーンの一つとして、首都圏を中心に展開し、設立から約四半世紀にわたる歴史を歩みました。しかし、経営権の変動や事業委託を経て、その事業活動は事実上終息したと考えられています。

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