アディティ

アディティ：自由をもたらす女神

アディティ（サンスクリット: अदिति, Aditi）は、インド神話における重要な女神で、ヴェーダにおいては特にミトラやヴァルナなどのアーディティヤ神群を創造したとされています。また、彼女は後世においてヴィシュヌの母として特に知られています。アディティはその名が示す通り、「束縛がない」という意味を持ち、人々を罪から解放し、自由をもたらす存在とされています。彼女は多くの神々とともに重要な役割を果たしてきましたが、その中でも独自の立場を確立しています。

ヴェーダにおけるアディティの役割

インド・イラン共通時代から続く古代神々の中で、アディティはより新しい、インド固有の神であると考えられています。特に興味深いのは、彼女がしばしば牝牛と同一視される点ですが、その理由はまだ解明されていません。『リグ・ヴェーダ』では、アディティは他の神々と共に歌われていることが多く、彼女だけを称える賛歌は存在しないため、彼女の詳細な役割は謎に包まれています。

アディティはダクシャとの関係でも神秘的な一面を見せます。『リグ・ヴェーダ』の中では、ダクシャはアディティが生んだアーディティヤのひとりとされていますが、別の箇所では「アディティからダクシャが、ダクシャからアディティが生まれた」と示されています。このように、彼らの関係は相互に絡み合っており、神話の深さを感じさせます。

叙事詩とプラーナにおけるアディティの地位

後世の叙事詩やプラーナにおいては、アーディティヤ12神のひとりとしてヴィシュヌが名を連ねますが、ダクシャはこのリストには含まれません。『ラーマーヤナ』によれば、ダクシャはブラフマーの心から生まれたプラジャーパティの一人であり、彼には60人の娘がいて、そのうちアディティを含む8人がカシュヤパと結婚しました。アディティの子供は、アーディティヤ12神、ヴァス8神、ルドラ11神、アシュヴィン双神など、合わせて33神を生んだとされます。

特にアディティとヴィシュヌに関連する神話の中には、ヴィシュヌが3歩で宇宙をまたぐ伝説があります。この物語では、バリが神々の王国からインドラを追放したため、アディティは自分の子であるヴィシュヌに助けを求めます。ヴィシュヌは彼女の子として生まれ、少年僧の姿でバリの宮殿に現れ、「3歩の土地を下さい」と要求しました。バリがそれを承諾すると、ヴィシュヌは急に巨大になり、2歩で全宇宙をまたぎ、最後の1歩でバリの頭を踏みつけて地下に押し込めてしまいます。

アディティの影響

さらに、カーリダーサの『シャクンタラー』では、アディティが夫のマーリーチャとともに登場し、最終幕でドゥフシャンタを祝福する場面があります。このような描写からも、アディティは人間界に影響を与える存在として描かれています。

アディティは、自由と解放の象徴であり、信者たちにとっては安らぎをもたらす神として、今なお多くの人々に崇拝され続けています。その神秘的な存在は、さまざまな文献や物語を通じて現代に引き継がれています。

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