アデホビル

アデホビル：B型慢性肝炎治療薬

アデホビルは、B型慢性肝炎の治療に用いられていた医薬品です。その作用機序は、ウイルスの増殖に必須な逆転写酵素の働きを阻害することにあります。アデホビルは、DNAアナログとして分類され、ウイルスが自身の遺伝情報を複製する過程を妨げることで、B型肝炎ウイルスの増殖を抑える効果を発揮します。

具体的には、アデホビルピボキシルという成分が製剤として用いられていました。これはアデホビルの化学構造に修飾を加えたもので、体内での吸収を高める効果があります。一般的には、アデホビルピボキシルもアデホビルと呼ばれていました。アデホビルは、かつてグラクソ・スミスクライン社から『ヘプセラ錠10』という商品名で販売されていましたが、2022年5月をもって販売が中止されています。

薬理作用：ウイルスの増殖抑制

[B型肝炎ウイルス]は、自身のRNAをDNAに逆転写する過程を経て増殖します。アデホビルはこの逆転写酵素を阻害することで、HBVの増殖を抑制します。これは、ラミブジンという別のB型肝炎治療薬と同様の作用機序です。しかし、ラミブジンでは耐性ウイルスの出現が問題となる場合がありますが、アデホビルはラミブジン耐性ウイルスに対しても有効性を示す場合があります。

しかし、アデホビルはHBVのゲノムが細胞内に存在する状態である共有結合閉環DNA（cccDNA）には作用しません。そのため、アデホビルはウイルスの増殖を完全に抑制するわけではなく、継続的な服用が必要となります。日本では、当初はラミブジンとの併用が原則でしたが、2008年9月からはアデホビル単独での治療も認可されました。

副作用：腎機能障害などに注意

アデホビルの使用にあたり、重大な副作用として腎機能障害（腎不全、ファンコーニ症候群など）、骨軟化症、骨折、乳酸アシドーシス、脂肪沈着による肝腫大などが報告されています。特に、ファンコーニ症候群は骨の代謝異常を招き、骨折のリスクを高めるため注意が必要です。そのため、アデホビルの投与中は、定期的に血清リンやアルカリホスファターゼなどの検査を行い、腎機能や骨の代謝状態をモニタリングすることが重要です。

まとめ

アデホビルは、B型慢性肝炎の治療に有効な逆転写酵素阻害剤でしたが、販売は中止されています。その作用機序や副作用、使用上の注意点を理解した上で、医師の指示に従って適切に服用することが重要です。他のB型肝炎治療薬であるラミブジン、エンテカビル、インターフェロンなどとの比較検討や、肝硬変や肝臓癌といった疾患との関連性についても、医療専門家への相談が重要となります。

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