アトリ

アトリ（Fringilla montifringilla）

アトリは、スズメ目アトリ科に分類される鳥類の一種で、鮮やかな羽色が特徴です。漢字では「獦子鳥」「花鶏」と表記されます。

分布

ユーラシア大陸北部の亜寒帯地域で繁殖し、冬季になると北アフリカ、ヨーロッパ、中央アジア、中国、朝鮮半島などへ渡り越冬します。日本には冬鳥として秋にシベリア方面から渡来し、主に日本海側を経由して山形県や富山県などに飛来した後、各地に散らばります。渡来する個体数は年によって大きく変動します。

形態

全長は約16cm。黄褐色を基調とし、黒色と白色が混ざった羽色をしています。特に胸部の羽毛は橙褐色でよく目立ちます。オスの夏羽は頭部が黒色になりますが、メスやオスの冬羽は頭部が褐色です。メスはオスに比べて全体的に色が淡いのが特徴です。

生態

山麓の森林や農耕地などに生息します。昼行性で、日中は小規模な群れで行動しますが、夜間は集団で休息します。日本では、渡来直後や繁殖地へ移動する直前に、数千羽から数万羽にもなる大規模な群れを形成することがあります。

食性は雑食性で、植物の果実や種子のほか、昆虫類や節足動物なども食べます。

人間との関わり

秋に日本へ飛来するため、戦前は穀物を食い荒らす害鳥とされていました。しかし、古くから岐阜県恵那地方では、ツグミと並んで食用として珍重され、かすみ網で捕獲して焼き鳥などにして食されていました。戦後にかすみ網が禁止されたため、アトリを対象とした狩猟は衰退しました。

参考文献

高野 伸二 (編集)、浜口哲一 (監修)『日本の野鳥』山と溪谷社〈山溪カラー名鑑〉、1985年9月、520-521頁。ISBN 9784635056038。

関連項目

日本の野鳥一覧
* 大田阿斗里

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