アドベンチャーノベルス

アドベンチャーノベルス：1980年代後半のゲームブックブームを彩ったレーベル

JICC出版局から刊行された『アドベンチャーノベルス』は、1980年代後半に流行したゲームブックの中でも特に注目を集めたレーベルの一つです。当時まだニッチな存在だったパソコン用アドベンチャーゲームを題材とした作品が多く、特にインフォレスト社製のゲームを原作としたものが多数を占めていました。しかし、日本製のゲームを原作とした作品や、映画、漫画を原作とした作品、そして完全オリジナルのゲームブックも出版されており、その幅広さが特徴です。

判型は新書判の右開きで、付属のしおりがゲーム進行に欠かせないアドベンチャーシートを兼ねていました。ゲームシステムは作品によって大きく異なり、単純にチェックしていくだけの簡単なものから、パソコンゲーム原作で戦闘システムを取り入れた、複雑な数値計算を必要とするものまで存在しました。後者のような作品では、手動で計算するには非常に面倒なほどの複雑な計算が必要となるケースもありました。

代表的な作品群

『アドベンチャーノベルス』レーベルからは、数多くの魅力的な作品が世に送り出されました。その中から、特に記憶に残る代表的な作品をいくつか紹介します。

インフォコム作品群:

ゾークシリーズ: 古代地下帝国を舞台としたInfocom原作のアドベンチャーゲームを基に、ゲームブックとしてアレンジされました。原作とは異なり、地下帝国と同時代を生きる主人公の視点で物語が展開されます。言葉探しなどの要素は簡略化されているものの、複雑な謎解きや分岐が少なく、ゲームブックとしてはやや物足りないとの声もありました。
ウィットネス: 1930年代のロサンゼルスを舞台にしたミステリー。警部が第一目撃者となる殺人事件に挑む物語で、読者は捜査の進め方や人間心理を読み解きながら事件解決に導いていきます。情報が錯綜しないよう、随所に手がかりの要約が挿入されている点が特徴です。
サスペクト: 雪に閉ざされた邸宅での殺人事件。容疑者となった主人公が、限られた時間の中で事件の真相を解き明かしていくスリリングな展開が魅力です。
デッドライン: 2つの殺人事件を同時に捜査することになる警部補の活躍を描いた作品。犯人を特定するだけでなく、裁判で有罪を立証する必要があり、単なる謎解きを超えた現実味のある展開が特徴です。
エンチャンターシリーズ: 魔法使いの成長物語。魔法の使い方がゲームの進行に影響を与える点が特徴ですが、魔法の使用にペナルティがなく、コンピュータゲーム的な解き方に陥りやすいという点も指摘されています。

その他のパソコンゲーム原作:

夢幻の心臓II: クリスタルソフト制作のパソコンゲームを原作とした作品。記憶喪失の戦士が、世界の闇を払うため冒険を繰り広げるファンタジーです。
ウルティマシリーズ: ロード・ブリティッシュの原案による、世界的に有名なシリーズのゲームブック版。複雑なパーティーシステムや計算が特徴で、読者の戦略性も試されます。

映画・漫画原作:

エイリアン2: 映画『エイリアン2』を原作としたゲームブック。
ゴーストハンターズ: 映画『ゴーストハンターズ』を原作としたゲームブック。
どろろ: 手塚治虫の漫画『どろろ』を原作としたゲームブック。

オリジナル作品:

アステカ: 1930年代メキシコを舞台にした冒険活劇。
ザ・スクリーマー: 第三次世界大戦後の荒廃した東京を舞台とした近未来SF。
帝王の涙: 宇宙を舞台にした秘宝争奪戦。
ウィル: 核ミサイル発射計画阻止を目的とした特殊部隊の活躍を描いた作品。
カーマイン: 西暦2008年の東西冷戦下の特殊部隊による作戦を描いた作品。
ゲームバスター魔界大突破: パズルとクイズを題材とした、日本独自のゲームブック。
ロマンシア: コミックが挿入されたファンタジー作品。
イーグルジャンクション: 対テロリスト部隊の作戦を描いた作品。
手天童子シリーズ: 永井豪原作の漫画『手天童子』を原作としたゲームブック。
赤塚不二夫劇場: 赤塚不二夫のギャグ漫画を原作とした作品。

『アドベンチャーノベルス』は、多様なジャンルの作品を網羅し、幅広い読者層に楽しまれたレーベルでした。その複雑なゲームシステムや、緻密に練られたストーリーは、多くのゲームブックファンに深い印象を与え続けています。

もう一度検索