アナンディーン・アマル

アナンディーン・アマル：激動の時代を生きたモンゴルの政治家

アナンディーン・アマル（1886年 - 1941年）は、20世紀前半のモンゴルにおいて重要な役割を果たした政治家です。彼は首相を二度務め、人民小会議幹部会議長（国家元首）も歴任しましたが、スターリンによる粛清の波に呑まれ、悲劇的な最期を迎えました。

生い立ちと初期のキャリア

アマルは1886年、トゥシェトゥ汗部（現在のボルガン県ハンガル）に生まれました。清朝時代には地方官吏としてキャリアをスタートさせ、ボグド・ハーン政権下でも役人として出仕しました。1923年に人民党に入党し、政治家としての道を歩み始めます。1923年から1928年にかけては、外務大臣、経済大臣、内務大臣などの要職を歴任し、副首相も務めました。

首相、そして国家元首へ

1928年2月21日、アマルは首相に選出され、1930年4月27日までその任を務めました。その後、1932年7月2日には国家元首に相当する人民小会議幹部会議長に選出され、1936年3月22日まで務めました。その後、再び首相に転出しています。

スターリンによる粛清と悲劇的な最期

1930年代後半、ソ連のヨシフ・スターリンはモンゴルの指導部に対する粛清に着手しました。スターリンの個人崇拝と大粛清に批判的だったアマルも標的となり、1939年3月7日の党中央委員会幹部会会議において、人民小会議幹部会議長だったダンスランビレギイン・ドグソムと共に反革命活動の罪で告発され、全ての役職を解任されました。その日のうちに党からも追放され、内務省によって逮捕されました。

1939年7月、アマルらはソ連内務人民委員部（NKVD）に引き渡され、モスクワへ送られました。1941年7月10日、日本のスパイという濡れ衣を着せられ死刑判決を受け、同年7月27日に銃殺刑に処されました。不当な罪による悲劇的な最期でした。

名誉回復

スターリンの死後、1956年12月15日に行われた再審の結果、アマルの容疑を裏付ける証拠は一切ないとして無罪となりました。処刑から21年後の1962年1月25日には名誉回復がなされ、1989年9月26日にはモンゴル人民党の党籍も回復されました。これにより、アマルは名誉を回復し、歴史に名を残すことになりました。

二期目の首相時代：チョイバルサンとの確執

アマルは一期目の首相の後、人民小会議幹部会議長を経て二期目の首相に就任しました。しかし、この頃にはホルローギーン・チョイバルサンがスターリンの信任を得て権力を拡大しており、アマル政権は必ずしも盤石ではありませんでした。アマルは反スターリン主義的な立場を取り、国民からの支持も厚かったため、チョイバルサンやソ連からの圧力を受けました。

アマルは革命15周年を記念して、ルフンベ事件に関連する囚人に恩赦を与え釈放しましたが、これがチョイバルサンやソ連を激怒させることになります。チョイバルサンはルフンベ事件を口実にしてアマルを「反革命活動に参加している」と非難し、「封建的なトラブルメーカーであるアマルを排除しなければならない！」と宣言し、モンゴルのスターリン主義化を推し進めました。アマルとチョイバルサンの対立は、モンゴルの政治史における重要な転換点となりました。

参考文献:
Sanders, Alan J. K. (2010). "AMAR, ANANDYN (1886-1941)". Historical Dictionary of Mongolia (Third ed.). Scarecrow Press. pp. 52–53. ISBN 9780810861916。

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