内務人民委員部

内務人民委員部（NKVD）

内務人民委員部は、ソビエト連邦における重要な政府機関で、その主な役割は警察機能の統括でした。この機関は、ヨシフ・スターリン政権のもとで、刑事警察、秘密警察、国境警察、諜報機関など、多岐に渡る権限を掌握していました。所謂「エヌカーヴェーデー」と略され、ロシア語の表記はНКВД、英語表記はNKVDです。特に、1934年に秘密警察と強制収容所が統合されたことにより、新たな形態の内務人民委員部としての役割を果たし、後のKGBへとつながっていきます。

歴史的背景

内務人民委員部の起源は1917年に遡り、ウラジーミル・レーニンによって設立されたチェーカーにまでさかのぼります。この機関は1922年にGPU、1924年にはOGPUという形態に改組され、1934年に内務人民委員部の一部として吸収されることになります。1934年、最初の長官に就任したゲンリフ・ヤゴーダは、その後の4年間、党や軍の粛清に取り組みましたが、彼自身も粛清の対象になり、その後任に選ばれたニコライ・エジョフの時代が始まりました。

エジョフ時代の恐怖政治

エジョフの指導下で、NKVDは「エジョフシチナ」と称される恐怖政治を行い、その粛清は市民の生活にも影響を及ぼしました。市民同士の密告が推奨され、互いに監視し合う状況が続きました。内部ではスパイの嫌疑が常につきまとい、NKVDの関係者自身もその対象とされました。特に1938年には大規模な粛清が行われ、多くの高級職員が処罰されたり、強制収容所に送られたりしました。エジョフ自身も1940年に処刑され、その異常な状況が続きました。

戦時中の役割

第二次世界大戦中、NKVDは赤軍の指揮系統とは別に独自に活動し、前線で兵士の士気を維持し、スパイの摘発にあたりました。スターリングラード攻防戦では、督戦隊として活動し、兵士が退却することを避けるために厳しい命令を実行しました。また、占領地での強制収容所の管理も行い、多数の政治犯が処刑される結果となりました。特にカティンの森事件では、大量虐殺が実行され、これもスターリンの命令によるものでした。

終戦後の変遷

1946年、NKVDはソビエト連邦内務省に改編され、その後の1954年には再独立しKGBとして知られるようになります。

機構と主要人物

内務人民委員部は設立当初、多くの部門を持っており、作戦課、特殊課、経済課、秘密警察課、外国課など、多様な業務が展開されていました。この機関の歴代長官としては、ゲンリフ・ヤゴーダ、ニコライ・エジョフ、ラヴレンチー・ベリヤが名を連ねています。特にべリヤは、国家保安省に改組されるまでの間、その影響力を保持していました。彼らのもとで、NKVDは恐怖政治を敷き続け、多くの市民に影響を与えました。

このように、内務人民委員部は、その機能と権限、そして歴史的背景から、ソビエト連邦の社会における重要な影響を持った機関であったことがわかります。

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