アニェス・ソレル

アニェス・ソレル（1421年 - 1450年）は、フランス王シャルル7世の愛妾であり、ヨーロッパ史上初の公妾として知られています。彼女は、それまで男性のみが身に着けていたダイヤモンドを女性として初めて着用したことでも有名です。

生涯

アニェスの前半生については、詳しい記録が残っていません。一兵士の娘として生まれ、シャルル7世に紹介されたのは20歳の時でした。当時、彼女はシャルル7世の義弟であるナポリ王ルネ・ダンジューの妻、イザベル・ド・ロレーヌの侍女として仕えていました。彼女は、当時の絵画に描かれているように、非常に美しい女性であり、並外れた知性の持ち主でもありました。シャルル7世はすぐに彼女の魅力に惹かれ、ロシュ城を私邸として与え、愛妾としました。

アニェスの存在は、すぐにシノンの宮廷で知られるようになりました。シャルル7世の王妃マリー・ダンジューは、アニェスの美貌を認めていましたが、アニェスもまた王妃を尊重したため、二人の関係は険悪ではありませんでした。しかし、アニェスは王に対して強い影響力を持つようになり、その贅沢な暮らしぶりもあって、宮廷内に多くの敵を作りました。

アニェスはシャルル7世との間に3人の娘、マリー、シャルロット、ジャンヌをもうけました。彼女は第4子を妊娠中に、1450年のジュミエージュ遠征に同行しましたが、急病で倒れ、同年2月9日に亡くなりました。当時の記録では死因は赤痢とされていますが、現在の研究では水銀中毒であると結論づけられています。当時、水銀は虫下しとして使われていましたが、彼女の死が殺害によるものという可能性も指摘されています。

シャルル7世の嫡子であり、後のルイ11世は、アニェスの死の4年前に父に対して反乱を起こしており、愛妾の影響下にある父を救うためにアニェスを排除したという推測もあります。また、財務官で大臣を務めていた貴族ジャック・クールもアニェス毒殺犯として疑われましたが、これは宮廷からクールを追放するための噂であったと考えられています。

2005年、フランスの化学者フィリップ・シャルリエがアニェスの遺体を調査し、死因が水銀中毒であると断定しました。しかし、殺害かどうかについては意見を述べていません。15世紀には水銀が化粧品に使われることもあり、それが死につながった可能性も指摘されています。

芸術の中のアニェス・ソレル

アニェス・ソレルは、その美貌から多くの芸術作品に影響を与えました。

15世紀の画家ジャン・フーケが描いた聖母子像のモデルとなった。
ピョートル・チャイコフスキー作曲のオペラ『オルレアンの少女』に登場。
ツェーザリ・キュイ作曲のオペラ『サラセン』に登場。
ジャン・アヌイ作の戯曲『ひばり』に登場。

子女

アニェスはシャルル7世との間に以下の3人の娘をもうけました。

マリー（1444年 - 1473年）：1458年、タイユブール伯オリヴィエ・ド・コーティヴィと結婚。
シャルロット（1446年 - 1477年）：1462年、モレヴリエ伯ジャック・ド・ブレゼと結婚。
* ジャンヌ（1448年 - 1467年）：1461年、サンセール伯アントワーヌ・ド・ビュエイユと結婚。

アニェス・ソレルの生涯は、宮廷の愛憎劇、権力闘争、そして謎に満ちた死という、多くの歴史的興味を引く要素を含んでいます。彼女の美貌と知性は、後世の芸術家たちにも大きな影響を与え続けました。

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