イザベル・ド・ロレーヌ

イザベル・ド・ロレーヌ：激動の生涯を送った女公と王妃

イザベル・ド・ロレーヌ（1400年 - 1453年）は、ロレーヌ女公であり、ナポリ王妃という二つの顔を持つ女性でした。父はロレーヌ公シャルル2世、母はローマ王ループレヒトの娘マルグリット。夫ルネ・ダンジュー（ナポリ王、バル公などを兼ねる）と共同でロレーヌを統治しました。

生涯

シャルル2世には男子相続人がいなかったため、ヨランド・ダラゴンは1420年に次男ルネをイザベルと結婚させました。これは政略結婚であり、1424年にルネがブルゴーニュ派にギーズ伯領を奪われたことが背景にありました。1431年に父が亡くなると、イザベルはロレーヌ公国を相続し、夫ルネが共同統治者となります。

しかし、従弟のヴォーデモン伯アントワーヌが公位継承に異議を唱え、ブルゴーニュ公フィリップ3世（善良公）の支援を受けました。ルネはアントワーヌに敗れ、捕虜となってしまいます。イザベルは子供たちを連れてフランス王シャルル7世の宮廷へ向かい、夫の釈放を嘆願しました。この時、同行していた侍女アニェス・ソレルがシャルル7世に見初められ、後に王の愛妾となったことは有名なエピソードです。

夫の不在中、イザベルは夫の領国の摂政を務めました。善良公と戦う夫を支援するため、自ら軍勢を率いたこともあります。1435年にルネが名目上のナポリ王となると、アラゴン王アルフォンソ5世もナポリの王位を主張し、イザベルは夫に代わってナポリへ赴き、アラゴン軍と戦いました。1437年にルネは釈放され、翌1438年にナポリでイザベルと合流しますが、戦況を覆すことはできず、1442年に王位を諦めてマルセイユへ帰還しました。

帰国後も災難は続きます。ロレーヌに反発する神聖ローマ帝国の都市メッツの兵に襲撃され、身の回りの品を奪われました。都市の反抗に苦しんでいたルネはシャルル7世に救援を要請し、1444年にフランス軍がロレーヌへ遠征するきっかけとなりました。

1453年、イザベルは亡くなり、公位は息子のジャン2世が継承しました。夫ルネは翌1454年にジャンヌ・ド・ラヴァルと再婚しました。

子女

イザベルとルネの間には、以下の子供たちが生まれました。

ジャン2世（1425年 - 1470年）
ヨランド（1428年 - 1483年） - ヴォーデモン伯フェリー2世と結婚。ロレーヌ公ルネ2世の母、共同統治者。
* マルグリット（1429年 - 1482年） - イングランド王ヘンリー6世と結婚。

この他に7人の子供がいましたが、夭逝しています。

イザベル・ド・ロレーヌは、激動の時代を生き抜き、ロレーヌ公国と夫のために奔走した女性でした。彼女の生涯は、政治、戦争、愛憎が渦巻く中世ヨーロッパの歴史を垣間見せてくれます。

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