アヌアル・ブラヒム

アヌアル・ブラヒム（Anouar Brahem、1957年10月20日 - ）は、チュニジア出身のウード奏者、作曲家として世界的に知られています。彼の音楽は、ジャズを基盤としながらも、アラブ音楽や民族音楽の要素を巧みに融合させた、独自のスタイルを特徴としています。

生い立ちと音楽の道

チュニジアの首都チュニスで生まれたブラヒムは、幼少期から音楽に親しみ、チュニジア音楽国際学院でウードを専門的に学びました。1981年には、新たな音楽的探求を求めてフランス・パリに移住。この地で、彼は様々なジャンルの音楽家と出会い、自身の音楽性を大きく開花させていきます。パリ滞在中は、映画音楽の作曲家としても活動し、チュニジア映画の音楽制作に携わりました。また、バレエ振付師モーリス・ベジャールによるバレエ作品『Thalassa Mare Nostrum』や、映画監督コスタ＝ガヴラスの作品『Hanna K.』では、リュート奏者として参加するなど、幅広い活動を展開しました。

独自の音楽スタイルの確立

1980年代後半にチュニジアに帰国後、ブラヒムはアメリカやカナダへのツアーを行い、その音楽性が国際的に注目されるようになります。その後、ECMレコードと契約し、賛否両論を巻き起こしながらも、数々のアルバムをリリースしました。これらの作品では、サックス奏者のジョン・サーマンやベーシストのデイヴ・ホランドなど、著名なジャズミュージシャンとの共演も実現しています。彼の奏法は、同じくウード奏者であるラビ・アブ＝カリルと比較されることもありますが、よりメロウで抑制の効いた点が特徴として挙げられます。

ディスコグラフィー

ブラヒムは、これまでに数多くのソロアルバムとコラボレーションアルバムを発表しています。以下に代表的な作品を挙げます。

ソロ・アルバム
『バルザク』 - Barzakh (1991年、ECM)
Conte de l'Incroyable Amour (1992年、ECM)
The Silences of the Palace (1994年、ECM)
『コムサ』 - Khomsa (1995年、ECM)
『シマール』 - Thimar (1998年、ECM)
Astrakan Café (2000年、ECM) ※アヌアル・ブラヒム・トリオ名義
『黒猫の歩み』 - Le Pas du Chat Noir (2002年、ECM)
『サハールの旅』 - Le Voyage de Sahar (2006年、ECM)
The Astounding Eyes of Rita (2009年、ECM)
Souvenance (2014年、ECM)
Blue Maqams (2017年、ECM)
コラボレーション・アルバム
Madar (1994年、ECM) ※ヤン・ガルバレク、Ustad Shaukat Hussainとの共演
* Charmediterranéen (2002年、ECM) ※Orchestre National de Jazz、Gianluigi Trovesiとの共演

ブラヒムの音楽は、伝統的なアラブ音楽の要素と、ジャズの即興性、そして現代音楽の実験精神が融合した、唯一無二の世界観を持っています。その繊細で美しい旋律は、聴く者の心を深く揺さぶり、魅了し続けています。

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