ウード

ウード：中東を代表する伝統楽器

ウードは、中東、北アフリカを中心に広く親しまれている撥弦[[楽器]]です。リュートや琵琶に近縁な楽器で、独特の形状と音色が特徴です。半卵形をした共鳴胴と、大きく反ったネックが目を引きます。フレットがないこともウードの大きな特徴の一つで、このため、グリッサンドやトリルなどの奏法が自由に表現できます。

一般的に6コース11弦で構成されており、10本の弦は5対の複弦、残る1本は単弦となっています。演奏には、プレクトラム（アラビア語ではリーシャ、トルコ語ではmızrapと呼ばれる）を使用します。

ウードの歴史：悠久の伝統と文化の融合

ウードの歴史は古く、その起源ははっきりしていませんが、アラビア語の「al-ʿūd」は、薄い木片を指す言葉であり、楽器の形状や素材との関連性が考えられています。また、ペルシャ語の「rud」という弦楽器を指す言葉からの借用語という説もあります。

伝説によれば、ウードはアダムの六世孫であるレメクによって発明されたと伝えられています。レメクが息子の死を悲しみ、その骨の形からウードの着想を得たという物語が残されています。

考古学的証拠では、5000年以上前のメソポタミアで発見された円筒印章に、リュート系の楽器と見られる図像が描かれていることが確認されています。

また、テュルク系民族の楽器であるコプズとの関連も指摘されています。音楽学者ジヌチェン・タンルコルルは、ウードは中央アジア付近のテュルク系民族のコプズから派生し、追加弦が後から加えられたと主張しています。

イラクではウードは特に深い伝統を持ち、「国の魂が宿る」と言われるほど重要な存在です。9世紀のバグダードでは、ウードの癒しの力が称賛され、19世紀の作家ムハンマド・シハーブ・アッ＝ディーンもその心を落ち着かせ癒す力を高く評価していました。しかし、2003年のイラク戦争とバアス党の崩壊後は、イスラーム過激派の台頭により多くのウード奏者たちが苦境に立たされました。

1923年のギリシャとトルコの住民交換によって、ウードはギリシャにも広がり、レベティコなどの伝統音楽で重要な役割を果たすようになりました。そして2022年には、ウードの製作と演奏はUNESCOの無形文化遺産に登録されました。

ウードの構造：独特の設計と音響特性

ウードの構造は他の多くの撥弦[[楽器]]とは異なっています。まず、ネック（棹）にフレット（柱）がありません。このため、奏者はグリッサンドやトリルなどの装飾音や、マカームに見られる微分音を演奏することができます。フレットのない設計は、中東音楽における装飾音の重視を反映しています。

弦は通常11本で、10本が5コースの複弦、残る1本が最低音の単弦です。演奏に必要な力は現代のギターに比べると軽めです。ペグボックスはネックから45度～90度曲がった形状をしています。胴の背面は半卵形で膨らんでおり、ギターのような平らな形状ではありません。この形状がウード独特の共鳴を生み出し、複雑で豊かな音色を作り出します。サウンドホールは1～3個あります。

プレクトラム：音色を左右する重要な要素

ウードの演奏にはプレクトラムが不可欠です。長さは人差し指より少し長く、伝統的にはタカの羽軸や亀の甲羅で作られていましたが、現代ではプラスチック製のものが一般的です。ウード奏者はプレクトラムの質にこだわり、サンドペーパーなどで研磨し、最高の音色が出るように工夫します。

各地のウード：多様なバリエーション

ウードには様々な種類があり、地域によって形状や調律が異なります。主な種類として、アラブ・ウード（シリア、イラク、エジプトなど）、トルコ・ウード、ペルシャ・ウード（バルバット）、北アフリカのウードなどがあります。それぞれに独特の音色や特徴があり、地域音楽文化を反映しています。

ウードと他の楽器：類似点と相違点

ギリシャのラウートやラヴタは、ウードと形状が似ていますが、フレットがあり、奏法も大きく異なります。これらの楽器はビザンティン・リュートに起源を持つとされています。

ウードの調律：多様な方法

ウードには様々な調律法があり、アラブ・ウード、トルコ・ウードなど、地域や音楽様式によって異なります。調律は、最下部の単弦から最上部の双弦への順序で表されます。

代表的なウード奏者

ウードの歴史において数多くの名手が活躍してきました。ラビ・アブ・カリル、ムハンマド・アブドゥルワッハーブ、常味裕司、アヌアル・ブラヒム、ヤクーブ・シャヒーン、ジョセフ・タワドロスなどは、その中でも特に有名な奏者です。

まとめ

ウードは、その歴史、構造、音色、そして奏者の技によって、豊かな音楽文化を支える重要な楽器です。その深遠な歴史と多様な表現力は、これからも多くの人々を魅了し続けることでしょう。

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