アバンダン

ディープ・パープルが1998年に発表したアルバム『アバンダン』（Abandon）は、彼らの音楽キャリアにおいて重要な位置を占める作品です。1994年に加入したギタリスト、スティーヴ・モーズにとっては2枚目のアルバムであり、オリジナル・メンバーであるジョン・ロードにとっては最後のスタジオ・アルバムとなりました。

アルバムタイトル『アバンダン』（Abandon）は、「永遠に去る」「完全にあきらめる」という意味を持ちますが、実はイアン・ギランの「A band on」（仕事中のバンド）という洒落に由来するというユーモラスな背景があります。

収録曲の中でも特に注目されるのは、「ブラッド・サッカー（Bludsucker）」です。この曲は、1970年に発表されたアルバム『ディープ・パープル・イン・ロック』に収録されていた「Bloodsucker」の再録音版であり、過去の名曲に新たな息吹を吹き込んでいます。ディープ・パープルの他のスタジオ・アルバムでは見られない、旧作の再録音という試みは、本作の大きな特徴の一つと言えるでしょう。

また、「ドント・メイク・ミー・ハッピー（Don't Make Me Happy）」は、誤ってモノラルで仕上げられたにもかかわらず、修正されることなくそのまま発表されたという逸話を持っています。しかし、その後ステレオで録音されたバージョンがシングルとして発表されており、異なるバージョンが存在することも興味深い点です。

アルバム発表後、ディープ・パープルは1998年から1999年にかけて「ア・バンド・オン・ツアー」（A Band On Tour）と題したワールド・ツアーを敢行しました。このツアーでは、再結成後15年目にして初めてオーストラリア公演が実現し、1999年4月20日のメルボルン公演の模様を収録したライブ・アルバム「Total Abandon: Australia '99」と同名のDVDが発表され、大きな話題を呼びました。

収録曲
エニ・フール・ノウ・ザット - Any Fule Kno That
オールモスト・ヒューマン - Almost Human
ドント・メイク・ミー・ハッピー - Don't Make Me Happy
セヴンス・ヘヴン - Seventh Heaven
ウォッチング・ザ・スカイ - Watching the Sky
フィンガーズ・トゥ・ザ・ボーン - Fingers to the Bone
ジャック・ルビィ - Jack Ruby
シー・ワズ - She Was
ホワッツアネーム - Whatsername
’69 - '69
イーヴル・ルイ - Evil Louie
ブラッドサッカー（ニュー・ヴァージョン） - Bludsucker

参加メンバー
イアン・ギラン – ボーカル
ロジャー・グローヴァー – ベース
ジョン・ロード  – オルガン、キーボード
スティーヴ・モーズ  – ギター
イアン・ペイス  –ドラムス

制作
フロリダ州、アルタモントスプリングズ、グレッグライクスタジオにて、97-98年に録音
プロデュース：ディープ・パープル／ロジャー・グローヴァー
エンジニア：ダレン・シュナイダー
エンジニア：キース・アンドリュース
プラチナ・ポスト・スタジオにてミックス：ダレン・シュナイダー
アシスタント・エンジニア：ケント・ハフナグル&シャノン・ブラディ
マスターディスク制作：グレッグ・カルビ、ニューヨークにて

『アバンダン』は、ディープ・パープルの多様な音楽性を凝縮した作品であり、彼らの長きにわたるキャリアの中でも、特に重要なアルバムの一つとして評価されています。

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