アバーヤ

アバーヤ（عَبَاية, ʿabāya）は、アラビア半島をはじめとするアラブ諸国やイランなど、イスラム圏で広く着用される民族衣装です。砂漠地帯の強い日差しから全身を守る役割があり、特に女性用は体のラインを隠すデザインが特徴です。男性用は、公式の場で着用されるフォーマルウェアとしての側面を持ちます。

アラビア語口語では「アバーヤ」と発音され、国際的にもこの発音が広く知られています。日本語では「アバヤ」と表記されることもあります。文語アラビア語では「アバーア（عَبَاءَة, ʿabāʾa(h)）」と表記します。

アバーヤの種類

アバーヤは、外套のような形状の長衣の総称で、男性用と女性用が存在します。海外では、イスラム的な女性用ガウンとして認識されることが多いですが、アラブ世界では男性用は「ビシュト」と呼ばれることが一般的です。

現代のアラビア女性のアバーヤは黒いものが主流ですが、元来は各地域の伝統衣装としてカラフルで華やかなものが多く用いられていました。近現代になって、近隣地域からの影響やイスラーム主義運動の高まりによって、黒い衣装が普及したと考えられています。現在でも黒以外のアバーヤが作られており、伝統を尊重しつつファッション性の高いものも人気です。

アバーヤと合わせて、頭部を覆うヒジャブ（ヒジャーブ）や、顔の一部を隠すニカーブ（英語: Niqāb）が着用されることが一般的です。保守的な地域では、女性の露出を抑えるためにニカーブを着用する人が多い傾向にあります。一方、ヒジャブを着用しない女性は、ロングワンピースのようにアバーヤを着用することもあります。

イラクの伝統的なアバーヤのように、ヒジャブと一体化したデザインも存在し、イランのチャードルのように頭に引っかけて着用するタイプもあります。これらのスタイルはイランから移入され、普及したと考えられています。

サウジアラビアでの着用義務廃止

サウジアラビアでは、女性が外出時にアバーヤを着用することが法律で義務付けられていましたが、2018年の開放政策により着用は強制ではなくなりました。現在では、ヒジャブを着用しない女性や、髪を出したヒジャブスタイルも見られるようになっています。

フランスでの着用制限

フランスでは、2023年8月に公立学校でのアバーヤ着用が禁止されました。これは、世俗主義に反するとの判断によるものです。フランスでは、2004年から公立学校内でのスカーフ着用が禁止され、2010年からは公共の場での顔を覆うヴェールの着用も禁止されています。イスラム系の団体は、この措置が差別的であり、イスラム教徒への憎悪を煽るとして撤回を求めましたが、国務院は学校では信仰を示すシンボルを身に着けることを禁じる法律に基づくものだと説明し、個人の自由を侵害するものではないと判断しました。

アバーヤの歴史

かつてアバーヤは、レバント地方、イラク、エジプト、アラブ湾岸諸国といった地域で、信仰、習慣、伝統の一部としてアラブ人女性が着用していました。砂漠や田舎、都市部を問わず、これらの地域ではアバーヤは一般的なスタイルでした。

関連項目

イスラム圏の女性の服装
チャードル
ヒジャブ（ヘジャブ、ヒジャーブ）
ハイク
ヴェール
ブルカ
* トーブ（サウブ）

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