アバーン・ブン・アル＝ワリード・ブン・ウクバ

アバーン・ブン・アル＝ワリード・ブン・ウクバ・ブン・アビー・ムアイトは、ウマイヤ朝の一族として、カリフのマルワーン1世（在位：684年 - 685年）とアブドゥルマリク（在位：685年 - 705年）の下で、ヒムス、キンナスリーン（ジャズィーラを含む）、そしてアルメニアといった広大な地域の総督を務めました。彼の兄弟であるウスマーンもまた、アルメニアにおけるアバーンの代官であったか、あるいは彼自身が総督であった可能性が指摘されています。

特に注目すべきは、アバーンの下で代官を務めたディーナール・ブン・ディーナールが694年または695年にビザンツ帝国を打ち破ったという事実です。この勝利は、ウマイヤ朝の軍事的な力を示すものであり、アバーン自身の手腕も高く評価される要因となりました。

688年または689年頃、カリフのアブドゥルマリクは、カイス族の指導者であるズファル・ブン・アル＝ハーリス・アル＝キラービーが起こした反乱の鎮圧をアバーンに命じました。ズファルは、ユーフラテス川沿いの戦略的に重要な前線基地であるカルキースィヤーの要塞から反乱を指揮しており、カリフのイラク征服に向けた計画にとって、非常に厄介な存在でした。当時、この地域はアブドゥルマリクに対抗してカリフを自称していたメッカを拠点とするアブドゥッラー・ブン・アッ＝ズバイルの弟、ムスアブ・ブン・アッ＝ズバイルの支配下にありました。ズファルはアブドゥッラー・ブン・アッ＝ズバイルの宗主権を認め、685年または686年にはウマイヤ朝の軍司令官であるウバイドゥッラー・ブン・ズィヤードによる攻撃を退けていました。

アバーンはズファルとの戦いで、ズファルの息子の一人を討ち取るという戦果を挙げましたが、カルキースィヤーからズファルを完全に追い出すことはできませんでした。しかし、この戦いを通じて、アバーンの軍事的な才能と、反乱鎮圧に対する強い意志が示されました。

アバーンの生涯と業績は、初期イスラム帝国の政治と軍事におけるウマイヤ朝の役割を理解する上で、重要な要素となります。彼の総督としての活動や、反乱鎮圧における功績は、当時の帝国の版図拡大と安定に大きく貢献しました。

参考文献

Crone, Patricia (1980). Slaves on Horses: The Evolution of the Islamic Polity. Cambridge, England: Cambridge University Press.
Dixon, 'Abd al-Ameer (1971). The Umayyad Caliphate, 65–86/684–705: (A Political Study). London: Luzac.

もう一度検索