アブドゥルマリク

アブドゥルマリク：ウマイヤ朝再興のカリフ

アブドゥルマリク・ブン・マルワーン（644年 - 705年）は、ウマイヤ朝の第5代カリフ（在位685年 - 705年）として知られています。彼は、イスラーム共同体の再統一、行政改革、そしてイスラーム国家の基盤強化に大きく貢献しました。

生い立ちと初期の経歴

アブドゥルマリクは、イスラーム教徒として育った最初の世代に属し、マディーナで敬虔な生活を送りました。彼はウマイヤ朝の創始者ムアーウィヤ1世や父マルワーン1世の下で軍事・行政の経験を積み、カリフの座を継承しました。当時のイスラーム国家は内乱状態にありましたが、アブドゥルマリクはこれを克服し、国家の再統一を成し遂げます。

カリフとしての治世

国家の再統一

アブドゥルマリクがカリフに即位した当時、イスラーム国家は第二次内乱の真っただ中にありました。彼はまずシリアの支配権を固め、その後、メッカを拠点とする反ウマイヤ朝勢力のアブドゥッラー・ブン・アッ＝ズバイルを討伐します。692年、アブドゥルマリクは将軍アル＝ハッジャージュ・ブン・ユースフをメッカに派遣し、アブドゥッラー・ブン・アッ＝ズバイルを殺害、イスラーム国家をウマイヤ朝の下で再統一しました。

行政改革

アブドゥルマリクは、権力の中央集権化を推し進め、軍事体制を強化しました。地方の税収をダマスクスに集め、兵士の給与制度を改革するなど、財政基盤を確立しました。また、ビザンツ帝国やサーサーン朝の通貨に代わる統一的なイスラーム通貨を導入し、官僚機構の公用語をアラビア語に切り替えました。これにより、国家のイスラーム化を推進し、行政効率を高めました。

軍事的な拡大

国家再統一後、アブドゥルマリクはビザンツ帝国との戦争を再開し、アナトリアやアルメニアに進出しました。また、北アフリカのカルタゴを破壊し、カイラワーンを支配下に置きました。これにより、後の北アフリカ西部とイベリア半島の征服の足掛かりを築きました。東方では、アル＝ハッジャージュ・ブン・ユースフが反乱を鎮圧し、ホラーサーンを含む東方地域におけるウマイヤ朝の支配を確立しました。

後継者問題

晩年、アブドゥルマリクは後継者問題に取り組み、息子のアル＝ワリード（ワリード1世）の継承を確保しました。705年にダマスクスで死去し、ウマイヤ朝の繁栄の礎を築いたカリフとして、歴史に名を残しました。

遺産

アブドゥルマリクは、内乱を鎮圧し、国家を再統一しただけでなく、その後のウマイヤ朝の発展に不可欠な行政改革を数多く実施しました。通貨の統一、公用語のアラビア語化、軍事力の強化など、彼の政策は、ウマイヤ朝を中央集権的な大帝国へと変貌させました。また、エルサレムに岩のドームを建設するなど、イスラーム建築の発展にも貢献しました。

アブドゥルマリクが築いた中央集権的な統治体制は、後の中世イスラーム国家の原型となり、その遺産は長くイスラーム世界に影響を与え続けました。

彼の政策は、後のウマイヤ朝カリフたちの治世における領土拡大と繁栄を可能にし、イスラーム世界の政治、経済、文化に深い影響を与えました。

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