アフマド・アル＝ミルガニー

アフマド・アル＝ミルガニー：スーダン激動の時代を生きた政治家

アフマド・アル＝ミルガニー（Ahmed al-Mirghani, 1942年8月16日 - 2008年11月2日）は、スーダンの政治家であり、同国第5代国家元首を務めました。1989年、オマル・アル＝バシールによる軍事クーデターによって政権を追われましたが、その短い統治期間はスーダン政治において重要な意味を持ちます。

生い立ちと政治への参加

1942年、ミルガニーはイスラム教の預言者ムハンマドの子孫という由緒ある家系に生まれました。ロンドン大学で経済学の博士号を取得後、外交官としてキャリアをスタートさせ、駐エジプト大使などを歴任しました。1985年、アブドゥルラフマン・スワリ・アル＝ダハブ暫定軍事評議会議長が民政移管を発表したことを受け、ミルガニーは統一民主党 (DUP) を率いて1986年の国民議会選挙に出馬。DUPは第二党となり、ミルガニーは新たな元首職である最高評議会議長に就任しました。

最高評議会議長としての業績と課題

1986年5月6日、ミルガニーは最高評議会議長に就任しました。しかし、当時のスーダンは第二次スーダン内戦の真っただ中にあり、国内は混乱と死傷者で溢れていました。ミルガニーは事態を打開するため、1988年にエチオピアの首都アディスアベバでスーダン人民解放軍との和平協定を締結。しかし、この和平協定はイスラム教の原理に反するという批判も招きました。また、ミルガニーは国際関係の改善やヌメイリ政権からの経済政策の立て直しにも尽力しました。

クーデターと亡命

ミルガニー政権の民主的な試みは長くは続きませんでした。1989年、オマル・アル＝バシール准将を中心とするクーデターが発生し、わずか3年で政権は崩壊。バシールは権力を掌握し、1993年に正式に大統領に就任。その後、約30年にわたる独裁政権を敷き、スーダンはテロ支援国家として国際的な孤立を深めることになります。ミルガニー自身はエジプトに亡命を余儀なくされました。しかし、ミルガニー政権は2024年現在、スーダン史上自由選挙で選ばれた最後の政権として記憶されています。

帰国と晩年

2001年11月8日、ミルガニーは12年間の亡命生活を終え、スーダンに帰国しました。晩年はダルフール紛争の解決に奔走し、スーダン解放軍との会談にも参加するなど、和平に向けた努力を続けました。しかし、体調を崩し、会議への出席が難しいこともありました。2008年11月2日、ミルガニーはエジプトのアレクサンドリアで66歳で生涯を閉じました。統一民主党 (DUP) の党首によれば、ミルガニーは健康診断を受けた後、療養のためエジプトに戻っていたとのことです。遺体は首都ハルツームに運ばれ、オマル・アル＝バシール大統領も追悼に訪れました。葬儀には多くの政治家や市民が参列し、その死を悼みました。

アフマド・アル＝ミルガニーは、激動のスーダン政治において、民主化と和平を模索した政治家として記憶されるでしょう。

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