アフメト2世

アフメト2世：オスマン帝国の苦難の時代を生きた皇帝

アフメト2世（1643年2月25日 - 1695年2月6日）は、オスマン帝国の第21代皇帝として、1691年から1695年までの短い期間在位しました。彼は第18代皇帝イブラヒムの子であり、メフメト4世とスレイマン2世の弟にあたります。

生涯

即位前

1649年、アフメトは兄であるメフメトとスレイマンと共に割礼を受けました。父帝の崩御後、彼は帝位を継承しない皇子たちが幽閉される「黄金の鳥籠」と呼ばれる場所で、即位までの43年間を過ごしました。これは、皇位継承争いを避けるための慣習であり、彼にとって不遇な時代でした。

即位後

1691年、異母兄であるスレイマン2世の崩御により、アフメト2世は皇帝として即位しました。しかし、彼の治世は困難に満ちていました。即位直後には、大トルコ戦争において大宰相キョプリュリュ・ムスタファ・パシャが戦死するという痛ましい出来事も起こりました。

税制改革

アフメト2世の治世において、税の徴収に関する重要な改革が試みられました。1691年には、勅令によってキリスト教徒に対する人頭税の徴収方法が変更されました。従来は村単位で総額が課税されていたものを、個人ごとに課税する方式へと改め、徴税時には証書を渡すことで不正を防ぐことを目指しました。しかし、この改革は同時に、これまで納税を免除されていたギリシャ正教会の聖職者にも人頭税が課されることになり、彼らの強い反発を招きました。聖職者たちは、「このような扱いはイスラム法に背く」と主張し、スルタンに訴えましたが、アフメト2世は課税の原則を曲げませんでした。このキリスト教聖職者に対する課税は、19世紀以降のバルカン半島の諸民族のナショナリズムを刺激する一因になったと指摘されています。

1695年には、安定した税収の確保と納税者の生活安定を目的として、16世紀末に導入された徴税請負制に終身制が導入されました。それまでの徴税請負人は任期付きであり、その間にできるだけ多くの収益を上げようとしたため、過度な収奪が行われ、納税者は苦しんでいました。そこで、徴税請負人を終身とすることで、長期的な視点での徴税を期待したのです。この制度改革によって、終身徴税請負人は各地の地方における有力者となり、「アーヤーン」と呼ばれるようになりました。アーヤーンは、オスマン帝国の戦争に協力することもあれば、時には反乱分子となることもありました。

死去

アフメト2世は、1695年に在位わずか4年で崩御しました。後を継いだのは、甥のムスタファ2世でした。アフメト2世にはイブラヒムという幼い遺児がおり、大宰相のシュルメリ・アリ・パシャはムスタファではなく、イブラヒムを即位させようと画策しましたが、ムスタファ2世がイスラム長老らの支持を得て即位を容認されたため、シュルメリ・アリ・パシャの試みは失敗に終わりました。その後、彼はそのことを理由にムスタファ2世によって大宰相を解任され、処刑されました。

家族

アフメト2世には、イブラヒム（1692年 - 1714年）とセリム（1692年 - 1694年）という双子の息子がいました。

アフメト2世の短い治世は、オスマン帝国の苦難の時代を象徴するものであり、彼の試みた税制改革は、後のバルカン半島の歴史に大きな影響を与えることになりました。

参考文献
* アラン・パーマー著、白須英子訳『オスマン帝国衰亡史』中央公論新社、1998年。

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