アブデュルハミト1世

アブデュルハミト1世：オスマン帝国の苦難と改革

アブデュルハミト1世（1725年3月20日 - 1789年4月7日）は、オスマン帝国の第27代皇帝（在位：1774年1月21日 - 1789年4月7日）として、帝国の苦難の時代を統治しました。アフメト3世を父に持ち、ムスタファ3世の弟にあたる彼は、ムスタファ4世、マフムト2世らの父でもあります。

生涯

即位まで

1725年に生まれたアブデュルハミトは、父の失脚後、トプカプ宮殿に37年間幽閉されるという不遇の時代を過ごします。幽閉中、母から歴史や書道を学び、1767年に解放、1771年には皇太子となります。

即位と領土の喪失

1774年、兄の後を継いで皇帝に即位しますが、即位直後から苦難が続きます。第一次露土戦争に敗北し、キュチュク・カイナルジ条約を締結。これにより、広大な領土と黒海における自由航行権をロシアに奪われ、正教徒の保護権までロシアに委ねる事態となりました。

1775年には、ザンド朝の侵攻によりバスラを占領されるなど、領土的な危機が続きました。

戦間期の改革

領土的な穴埋めと軍事力強化のため、アブデュルハミト1世はイェニチェリの装備更新、砲兵隊の設立、工科学校の設立など、軍事改革に力を注ぎました。また、エジプト、シリア、ギリシャなどでの帝国の支配力強化を図り、エジプトでは一定の成果を上げました。

しかし、首都イスタンブールでは大規模な火災が頻発。1782年の大火では自ら消防隊を指揮し、「ヴェリ（聖人）」と称えられました。この火災はイスタンブール史上最大規模となり、多くの家屋が焼失しました。

クリム・ハン国を巡る外交も難航し、ロシアの介入を招き、最終的にはクリミアはロシアに併合されるという結果となりました。

戦争の再開と崩御

1787年、再び露土戦争が勃発。さらにオーストリアが参戦し、オスマン帝国は劣勢を強いられます。ウージー陥落やブカレスト占領など、戦況は悪化の一途をたどりました。

度重なる敗戦の中、1789年にアブデュルハミト1世は崩御。甥のセリム3世が後を継ぎました。

人物像

アブデュルハミト1世は、イスタンブールに多くの建築物を残し、社会福祉にも貢献しました。家族との時間を大切にし、信心深い性格であったと伝えられています。

領土を失うなど、苦難の多い治世でしたが、その勤勉さと慈悲深さから、民衆からの評価は決して低くありません。彼は、頻繁に街を視察し、民の声に耳を傾け、問題解決に尽力しました。

家族

アブデュルハミト1世は、多くの子女に恵まれました。ムスタファ4世、マフムト2世など、後のオスマン帝国を担う人物もいます。

妻

アイシェ・カドゥン
ルフシャー・カドゥン
ヒュマーシャー・カドゥン
シネペルヴェル・カドゥン
ビンナズ・カドゥン
メフタベ・カドゥン
ムテベレ・カドゥン
シェブセファ・カドゥン
ナクシディル・スルタン

息子

ムスタファ4世
マフムト2世
その他多数

娘

ハティジェ・スルタン
アイシェ・スルタン
エスマ・スルタン
その他多数

アブデュルハミト1世は、領土喪失や戦火、災害など、多くの苦難に見舞われた時代を統治しました。しかし、彼は民を想い、帝国の復興と改革に尽力した皇帝として、歴史に名を刻んでいます。

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