ザンド朝

ザンド朝（ペルシア語: سلسله زندیه‎）は、18世紀後半にイラン南西部を拠点としたイスラム王朝です。首都はシーラーズに置かれました。

歴史

ザンド朝の創始者であるザンド部族は、元々イラン高原西部のハマダーン南部に居住していました。サファヴィー朝が崩壊し、混乱が続く中で、アフシャール朝のナーディル・シャーが台頭すると、ザンド部族は一時的にホラーサーン東部の草原地帯に移住させられました。ナーディル・シャーの死後、カリーム・ハーンを指導者として、ザンド部族は元の根拠地に戻り、自立してザンド朝を樹立しました。

カリーム・ハーンは、勢力拡大の過程で、サファヴィー朝の最後の君主の孫であるイスマーイール3世を名目上のシャーとして擁立しました。そして、自身はその代理人（ヴァキール）として実質的な支配を行いました。1760年までには、アフシャール朝が支配するホラーサーンを除くイランの大部分を支配下に置きました。さらに、アゼルバイジャンやイラク方面にも進出し、バスラ地方も支配しました。しかし、その一方で、ガージャール部族連合のムハンマド・ハサン・ハーンと激しく対立しました。カリーム・ハーンは、この抗争の中で、ムハンマド・ハサン・ハーンの息子であるアーカー・ムハンマド・ハーンを捕らえてシーラーズに抑留し、ガージャール部族連合内の対立を利用しようとしました。

ガージャール部族連合を抑え込んだことで、イラン高原には一時的に平和が訪れ、ザンド朝は繁栄しました。カリーム・ハーンは、自らの称号を「王朝の代理人」から「人民の代理人」に変更し、イスマーイール3世の死後も、その後継者を立てることはありませんでした。対外関係においては、カリーム・ハーンはサファヴィー朝時代の交易を復活させるため、イギリスにブーシェフルに東インド会社の交易所を設置する権利を与えました。これにより、ブーシェフル経由のペルシア湾交易が活発化しましたが、同時にイギリスのイランにおける影響力も増大しました。

1779年にカリーム・ハーンが亡くなると、ザンド朝では後継者争いが勃発し、急速に弱体化しました。各地で反乱が起こり、周辺の勢力からの侵攻を受けました。ザンド朝の最大の敵であるガージャール部族連合では、シーラーズを脱出したアーカー・ムハンマド・ハーンが権力を掌握し、ガージャール朝を建国しました。1781年には、アスタラーバードでデヴェルーを制圧し、勢力を拡大しました。1794年には、最後の君主であるルトフ・アリー・ハーンがガージャール朝によって捕らえられ、ザンド朝は滅亡しました。

歴代君主

カリーム・ハーン（在位：1750年 - 1779年）
ムハンマド・アリー・ハーン（在位：1779年）
アブル・ファトフ・ハーン（在位：1779年）
アリー・ムラード・ハーン（在位：1779年）
サーディク・ハーン（在位：1779年 - 1782年）
アリー・ムラード・ハーン（在位：1782年 - 1785年）
ジャアファル・ハーン（在位：1785年 - 1789年）
ルトフ・アリー・ハーン（在位：1789年 - 1794年）

系図

（系図は省略）

脚注

(脚注は省略)

参考文献

下津清太郎 編 『世界帝王系図集 増補版』 近藤出版社、1982年、p. 183

関連項目

サファヴィー朝
* アフシャール朝

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