アブドゥッラー・ビン・アブドゥルアズィーズ

アブドゥッラー・ビン・アブドゥルアズィーズ・アール＝サウード：サウジアラビア近代化を牽引した国王

アブドゥッラー・ビン・アブドゥルアズィーズ・アール＝サウードは、2005年から2015年までサウジアラビア国王を務めた人物です。初代国王イブン・サウードの息子として1924年に生まれ、幼少期は宗教指導者や知識人から教育を受けました。彼は、国家警備隊司令官や副首相などの要職を歴任し、国王ファハドの脳卒中後には事実上の摂政として国政を担いました。

生涯と王位継承

アブドゥッラー国王は、イブン・サウード国王の8番目の夫人を母に持ち、リヤドで誕生しました。彼はサウード家の学校で教育を受け、高い宗教的知識と教養を身につけました。1963年には国家警備隊司令官に就任し、その後、副首相などの要職を歴任。国王ファハドの治世下では王太子兼副首相として、事実上の国政指導者となりました。2005年、ファハド国王の崩御に伴い、第6代国王に即位しました。

国内政策と近代化

アブドゥッラー国王は、サウジアラビアの近代化に尽力しました。映画館の解禁や女性の社会進出促進など、保守的な社会に改革の風を吹き込みました。アブラージュ・アル・ベイト・タワーズなどの大規模建築事業も彼の治世下で進められました。一方で、彼は伝統的なイスラム社会の価値観も尊重しており、そのバランス感覚は彼の政策の特徴でした。しかし、彼の治世においても、王室によるマドラサへの出資や、以前のアフガニスタン・ターリバーン支援といった、批判的な視点を避けることはできません。ただし、アメリカによる独立調査では、アルカイーダへの支援は否定されています。

国際関係とアラブ和平イニシアチブ

アブドゥッラー国王は、国際社会においても重要な役割を果たしました。2002年には「アラブ和平イニシアチブ」を提唱し、イスラエルとの和平に向けた大きな一歩となりました。このイニシアチブは、イスラエルによるパレスチナへの占領地返還と、イスラエルによるパレスチナ自治政府の承認を呼びかけるものでした。イスラエルは、この提案に対し当初肯定的な反応を示しましたが、具体的な交渉は難航しました。アラブ連盟やイスラム諸国会議機構などからも支持を得たものの、ハマースなどの抵抗勢力の反対もあり、和平実現には至りませんでした。シリア内戦やバーレーン騒乱への対応など、地域情勢への関与も積極的に行いました。

アメリカ合衆国との関係

アブドゥッラー国王はアメリカ合衆国との良好な関係を維持することに努めました。彼はアメリカを幾度となく訪問し、歴代大統領と会談を重ねました。9.11同時多発テロ事件後も、アメリカとの連携を強化し、テロリズムとの戦いに積極的に取り組んだ。国王は2003年にアメリカ大統領に書簡を送って、テロリズムに対する断固たる姿勢を示しています。

慈善活動

アブドゥッラー国王は、個人的にも慈善活動に積極的に携わっていました。結合双生児の手術費用を負担するなど、人道的な支援にも貢献しました。

まとめ

アブドゥッラー国王は、サウジアラビアの近代化と国際社会における役割向上に多大な貢献を果たした国王でした。彼の政策は、伝統と近代化のバランス、そしてイスラエルとの和平という難しい課題への取り組みなど、様々な側面から評価することができます。彼の死後も、彼の政策はサウジアラビアの政治や社会に大きな影響を与え続けています。

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