アブドゥル・カラーム

アヴール・パキール・ジャイヌラーブディーン・アブドゥル・カラーム

アヴール・パキール・ジャイヌラーブディーン・アブドゥル・カラーム（A.P.J.アブドゥル・カラーム、1931年10月15日 - 2015年7月27日）は、インドの卓越した政治家、科学者、技術者であり、第11代インド大統領を務めました。彼は、インドの宇宙開発とミサイル開発における先駆的な貢献から「インドのミサイル男」として広く知られています。

生涯と業績

カラームは、現在のタミル・ナードゥ州に位置するダーヌシュコディの労働者階級のムスリム家庭に生まれました。マドラス工科大学で航空工学を修めた後、国防研究開発機構（DRDO）に入り、ホバークラフト計画に参加しましたが、このプロジェクトは成功しませんでした。その後、インド宇宙開発研究所（ISRO）に移り、いくつかの人工衛星の打ち上げに貢献しました。1980年には、インド初の国産人工衛星打上げロケットSLV-IIIの開発プロジェクトリーダーとして、ロヒニ衛星の低軌道投入に成功しました。

1982年、DRDOに所長として復帰し、国産の誘導ミサイル開発に尽力しました。アグニミサイルとプリットヴィーミサイルの開発と運用を主導し、インドのミサイル開発能力を飛躍的に向上させました。この功績により、「インドのミサイル男」というニックネームを得ました。

1992年7月には、インド国防省の科学顧問に就任し、インド政府の主席科学顧問として大臣に任ぜられました。1998年のポクラン-2核実験の成功に貢献し、インドの核保有国としての地位を確立しました。また、内閣科学顧問委員会（SAC-C）の議長として、インド・ミレニアム・ミッション2020を指揮しました。

2002年、カラームは第11代インド大統領に選出され、2007年までその職を務めました。大統領退任後も、教育者、研究者として活動し、特に若者の育成に力を注ぎました。2014年には、北京大学名誉教授の称号を授与されました。

2015年7月27日、カラームは83歳で死去しました。その功績を称え、インド政府は国を挙げて追悼しました。

褒賞

カラームは、科学技術への貢献により、数々の賞を受賞しています。少なくとも30の大学から名誉博士号を授与されたほか、インド最高の民間褒賞であるパドマ・ブーシャン勲章（1981年）、パドマー・ヴィブーシャン賞（1990年）、バーラト・ラトナ賞（1997年）を受賞しています。

政治的見解と個人生活

カラームは、自著「インド2020」で、インドが2020年までに知識超大国、および先進国へと発展するための目標達成計画を提唱しました。彼は、インドが国際関係においてより強硬な態度を取るべきだと主張し、インドの核兵器開発計画における自身の成果を、将来の超大国としてのインドの地位を保証するものと見なしていました。

カラームは厳格な規律を守り、菜食主義、絶対禁酒主義、禁欲主義を実践していました。クルアーンとバガヴァッド・ギーターの両方を読み、タミル文学の古典詩集『ティルックラル』の研究者でもありました。また、自伝「Wings of Fire」をはじめ、数々の啓発的な本を著しました。

アブドゥル・カラームは、インドの科学技術の発展に大きく貢献し、国民から敬愛された人物でした。彼の業績は、インドの歴史に深く刻まれ、後世に語り継がれています。

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