アベリサウルス科

アベリサウルス科：ゴンドワナ大陸の頂点捕食者

アベリサウルス科(Abelisauridae)は、ケラトサウルス下目に属する獣脚類恐竜のグループです。白亜紀に繁栄し、当時の南半球、特にゴンドワナ大陸に広く分布していました。現在、彼らの化石はアフリカ、南アメリカ、インド、マダガスカルといった地域で多数発見されており、ヨーロッパからも存在が確認されています。最古の化石はジュラ紀中期にまで遡り、6600万年前の中生代末期まで生き残った種も存在したと推測されています。

特徴的な形態

アベリサウルス類は、多くの獣脚類と同様に二足歩行の肉食動物でした。しかし、他の獣脚類とは異なる特徴的な形態を持っていました。

短い前肢: 前肢は非常に短く、痕跡程度のものしか残っていない種もいます。
独特の頭骨: 頭骨は短く、高さが高く、表面には多くの溝や孔、突起が見られます。特にカルノタウルスのような種では、目の上に角状の突起を持つものもいました。
* 体格: 大部分の種は体長5～9メートル程度でしたが、ケニアで発見された未命名種は11～12メートルに達する可能性があるとされています。

生態と社会性

アベリサウルス類は、白亜紀後期の南半球の生態系において主要な捕食動物の一つでした。しかし、一部の地域ではバウルスクスなどの大型ワニ類と競合していた可能性も示唆されています。パタゴニアで見つかった足跡化石からは、集団で行動していた可能性も示されています。

頭骨の詳細

アベリサウルス類の頭骨は、種によって多様な特徴を持っています。共通の特徴としては、高く短い形状、鈍い口吻、眼窩の上部に隆起や角状の突起を持つものが多いことが挙げられます。これらの突起は、種間の識別や威嚇ディスプレイに使用されていたと考えられています。

涙骨と後眼窩骨は眼窩の前後から突出しており、眼窩をほぼ2つの区画に分けています。眼球は上部の区画に位置し、カルノタウルスではわずかに外側に傾いており、両眼視が可能な構造であったと推測されています。

前肢の退化

アベリサウルス類の前肢は著しく退化しており、極端に短く、可動性も限られています。指の数も少なく、爪も退化しているか、あるいは存在しない場合もあります。この前肢の退化は、遺伝子HOXA11とHOXD11の機能喪失が原因であるという説も提唱されています。

分布と進化

アベリサウルス類の化石は、ゴンドワナ大陸に由来する地域から多く発見されています。初期の化石はジュラ紀中期のものも存在し、ゴンドワナ大陸が分裂する以前から存在していたことを示唆しています。2014年にはフランス南部から化石が発見され、ヨーロッパへの分布も確認されました。

分類

アベリサウルス科は、アベリサウルス上科に属し、ノアサウルス科と近縁です。分類に関しては、ノードベースとステムベースの2つの定義があり、どちらの定義を用いるかで含まれる属が異なります。アベリサウルス科内には、カルノタウルス亜科とマジュンガサウルス亜科といったサブグループが存在します。

系統解析

アベリサウルス類の系統関係は、複数の系統解析によって研究されています。最近の研究では、カルカロドントサウルス類との共通点を指摘する一方で、形態的にはケラトサウルス類との類似性が高いことも示されています。これらの研究は、アベリサウルス類の進化史や系統関係を解明する上で重要な手がかりとなります。

まとめ

アベリサウルス科は、白亜紀のゴンドワナ大陸を代表する獣脚類恐竜の一つです。独特の形態と生態、そして複雑な進化史は、恐竜の多様性と進化を理解する上で重要な知見を提供してくれています。今後の研究により、さらに多くのことが明らかになることが期待されます。

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