アマッポ

アマッポの概要

アマッポはアイヌ民族が使用していた自動発射式の弓矢の一種であり、主に狩猟に用いられていました。その語源はアイヌ語で「置くもの」を指し、狩猟具としての特徴を強調しています。アマッポは手に持って使用するのではなく、獣道に仕掛けておくことで獲物を狙います。この仕組みは、野生動物に近づいた時に自動的に矢が発射されるというもので、狩猟の効率を大いに高めました。

構造と仕掛け

アマッポの基本的な構造は、クー（弓）、マカニッアイ（仕掛け矢）、ヘチャウエニ（引き金）、ノㇷ゚カ（触り糸）から成り立っています。弓はクネニ（イチイ）などの弾力のある木材で作られ、その弦にはフンペ（クジラの筋）やパㇱクㇽエプ（ツルウメモドキ）が使用されています。矢はトㇷ゚（チシマザサ）やノリウツギから作られ、強力な毒が塗られています。

この弓の仕掛けはクロスボウや弩に似ており、弦を引き絞って矢を装填し、触り糸を張ることで完成します。獣道に仕掛けて、通り過ぎる獲物が糸に触れると引き金が外れ、矢が放たれるという仕組みです。アマッポはアイヌだけでなく、周辺のツングース系民族にも類似する形で利用されていました。

運用時期と設置方法

獲物を狙うためのアマッポは、視界が遮られる春から秋にかけて使用されます。具体的には春に水浴びをするエゾシカ、夏に獣道を、秋には冬眠に備えて食いだめをするヒグマを狙って仕掛けます。特に、ヒグマの狙いでは触り糸の高さに工夫があり、獲物の鼻先に糸がかかるように設定されます。

設置に当たっては、まず獣道の傍に杭を打ち込み、その間に弓を固定します。触り糸は獲物によって高さを調整し、通る動物が引っかかりやすいように設定します。さらに、矢には強い毒が施されます。

事故防止と危険性

アマッポは非常に危険な道具であり、毒を盛られたことで、他人が近寄って被害に遭うこともあります。このため、触り糸を緩めに張り、発射方向に配慮を加えた構造が取られました。また、仕掛けた近くの木に注意を促す印を残すことも重要とされています。

事故はアイヌ社会でも多く報告されており、特に狩猟中の誤射が問題視されました。明治時代にはアマッポによる死亡事件が相次ぎ、最終的には使用禁止の令が出されました。

武器としての利用と矢毒の製法

アマッポは狩猟用具である一方、時には人間を狙った武器として使用されることもありました。シャクシャインの乱では、その武器としての使用が記録されています。アマッポの矢毒はスㇽク（トリカブト）から作られ、製法は地域や個人によって異なる秘伝が保持されていました。

矢毒の製造には多くの危険を伴い、毒性の強弱を調整しながら数種を造り、実際に使用する際には獲物に応じた毒を選択します。特に人食い熊に対しては、強力な毒を使用することが重要とされました。

歴史的背景

アマッポの形状は中国の弩に似ており、アイヌへの伝来が推測されています。また、日本の古い時代から類似の罠が存在していた可能性も示唆されています。明治時代初期にはアマッポの使用が禁止されたが、それでもその文化は根強く残り、昭和の時代でも使用され続けました。

今日ではアマッポやそのような罠を使った狩猟は法律で禁止されており、アイヌの伝統的な狩猟道具としての歴史を持ちながらも、現代ではその姿を消しています。

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