アムポテロス

アムポテロス（アンポテロス）

古代ギリシアの伝説に登場する人物で、その名は「アンポテロス」（古希: Ἀμφότερός, Amphoteros）とも記されることがあります。

系譜

アムポテロスは、名高い予言者アムピアラーオスの子であるアルゴスの英雄アルクマイオーンと、河神アケローオスの娘カリロエーとの間に生まれました。彼の同腹の兄弟にはアカルナーンがいます。また、父アルクマイオーンには、彼らの母カリロエーの他にも妻や愛人がいたため、クリュティオス、アムピロコス、ティーシポネーといった異母兄弟も存在しました。

神話における活躍

アムポテロスの物語は、父アルクマイオーンの悲劇的な死に端を発します。アルクマイオーンは、母カリロエーが持つハルモニアーの首飾りと長衣を巡る争いの末、アルカディア地方のプソーピスの王ペーゲウス、あるいはその息子たちの手にかかって命を落としました。

夫の死を知ったカリロエーは深く悲しみ、まだ幼かった息子たち、すなわちアムポテロスとアカルナーンが父の仇を討てるよう、大神ゼウスに成長を願いました。母の切なる祈りはゼウスに聞き届けられ、驚くべきことに二人の子供たちは突然、大人としての身体と力を得たのです。

急成長を遂げたアムポテロスとアカルナーンは、父の仇討ちを果たすべくアルカディア地方へと向かいました。彼らはまず、アルカディアの王アガペーノールの宮廷でペーゲウスの息子たちに遭遇し、これを討ち果たします。さらに、プソーピスの王宮に乗り込み、ペーゲウスとその妻をも殺害することで、父への復讐を完遂しました。

しかし、復讐の後、プソーピス人たちの追跡を受けることとなります。二人はテゲアーという町へ逃れ、ここでテゲアーの住民たちと、追手に抵抗するために派遣された23人のアルゴスの戦士たちの助けによって、難を逃れることができました。

その後、母カリロエーのもとに帰還した二人は、母の父である河神アケローオスの指示に従います。父アルクマイオーンが命を落とす原因ともなったハルモニアーの首飾りと長衣を、神聖な場所であるデルポイのアポローンの神殿に奉納しました。これにより、首飾りを巡る呪われた運命に終止符が打たれたと伝えられています。

奉納を終えたアムポテロスとアカルナーンは、故郷を離れ、エーペイロス地方で共に新しい土地への移住者たちを集めました。そして、彼らが率いる人々とともに、現在のギリシャ西部にあたる地方へと渡り、そこに新たな植民地を建設しました。この植民地は、アムポテロスの兄弟アカルナーンにちなんで「アカルナーニアー」と呼ばれるようになったと伝えられています。兄弟は共にこの地の建設と発展に尽力したとされています。

その他の同名人物

ギリシア神話や歴史において、「アムポテロス」という名前を持つ人物は他にも存在します。特に有名なのは、トロイア戦争に参加し、戦場で命を落としたトロイアの戦士アムポテロスです。彼と、アルクマイオーンの子であるアムポテロスは別人として知られる人物は、全く別の存在です。

アムポテロスの物語は、父への孝行、神の助力、そして新たな共同体の創設といった、ギリシア神話の重要なテーマを包含しています。彼の名前は、兄弟アカルナーンと共に、現在のギリシャの地名としてその名残を留めているのです。

（参考文献：アポロドーロス、オウィディウス、パウサニアス、ヒュギーヌス、ホメロス、高津春繁『ギリシア・ローマ神話辞典』などを参照しています。）

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