ポーリン・ケイル

ポーリン・ケイル（Pauline Kael, 1919年6月19日 - 2001年9月3日）は、アメリカ合衆国出身の著名な女性映画評論家です。1968年から1991年まで『ザ・ニューヨーカー』誌に掲載された映画評によって、彼女の名は広く知られるようになりました。彼女は、アメリカ映画批評界において最も影響力のある人物の一人として認識されています。

生い立ちと初期のキャリア

ケイルは、カリフォルニア州ペタルマで生まれました。彼女の両親はポーランドからのユダヤ人移民であり、養鶏場を経営していました。ケイルが8歳の時、家族は養鶏場を離れ、サンフランシスコに移住しました。彼女はカリフォルニア大学バークレー校で哲学や文学を学びましたが、学位を取得することなく中退しました。

1953年、ケイルは雑誌『City Lights』の編集者の誘いを受け、映画評を書き始めました。その後、『McCall's』や『The New Republic』といった雑誌でも執筆活動を行いました。

映画評論家としての成功

1965年に出版された初の映画批評集『I Lost It at the Movies』は、15万部を売り上げるベストセラーとなりました。この成功により、ケイルは映画評論家としての地位を確立しました。

1968年、ケイルは『ザ・ニューヨーカー』誌で映画批評を執筆するようになり、その最初の作品は『俺たちに明日はない』に関するものでした。彼女の批評は、映画に対する深い愛情と独自の視点、そして率直な意見表明によって特徴づけられていました。

1974年には、『Deeper into the Movies』で全米図書賞を受賞しました。

2001年9月3日、ケイルはパーキンソン病のため、マサチューセッツ州バークシャー郡の自宅で亡くなりました。82歳でした。

批評スタイル

ケイルは、好き嫌いがはっきりとした批評で知られていました。彼女の文章は、情熱的で主観的であり、映画に対する深い愛情と鋭い洞察力に満ちていました。彼女は、映画を単なる娯楽作品としてではなく、社会や文化を反映する芸術作品として捉え、その作品が持つ意味や影響について深く掘り下げました。彼女の批評は、しばしば賛否両論を呼びましたが、その率直さと独自の視点は、多くの読者や映画関係者から高く評価されました。

彼女は、スタンリー・キューブリック監督の『2001年宇宙の旅』を酷評したことでも知られています。

翻訳された著書

小池美佐子 訳『スキャンダルの祝祭』新書館、1987年1月。
浅倉久志 訳『映画辛口案内 私の批評に手加減はない』晶文社、1990年7月。
柴田京子 訳『今夜も映画で眠れない : ポーリン・ケイル集』東京書籍、1992年11月。
山田宏一 監修、畑中佳樹 訳、柴田元幸 訳、斎藤英治 訳『明かりが消えて映画がはじまる : ポーリン・ケイル映画評論集』草思社、2003年10月。

ポーリン・ケイルは、映画批評の世界に大きな足跡を残しました。彼女の批評は、今もなお多くの人々に読まれ、議論されています。

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