アモキシシリン

アモキシシリンについて

アモキシシリン (amoxicillin) は、細菌感染の治療に用いられる抗生物質の一つで、特にβ-ラクタム系に分類されます。この薬剤は、ペニシリン系抗生物質に属し、腸からの吸収が優れているため経口用薬として使用されることが多いです。アモキシシリンは、1972年にビーチャム（現在のグラクソ・スミスクライン）によって開発され、日本では協和キリンの「パセトシン」や、LTLファーマの「サワシリン」など、さまざまな商品名で流通しています。

薬理学的作用

アモキシシリンの主な作用は、細菌の細胞壁の合成を妨げることによって実現します。具体的には、グラム陽性菌の細胞壁構成成分であるペプチドグリカン鎖の架橋を阻害し、これにより細菌の成長を抑制します。

微生物学的スペクトル

アモキシシリンはグラム陽性菌と一部のグラム陰性菌に対して有効となります。以下のような微生物に効果があります。

グラム陽性菌

• - 連鎖球菌
• - ペニシリンに感受性の肺炎球菌
• - 腸球菌（Enterococcus faecalisに特に効果的）

グラム陰性菌

• - β-ラクタマーゼ未生産の細菌に対して効果を示します。例としては、インフルエンザ桿菌、淋菌、髄膜炎球菌、大腸菌、プロテウス菌、サルモネラ菌などがあります。

耐性菌

アモキシシリンは、ペニシリナーゼを生産する菌には効果が薄く、特にペニシリナーゼ産生黄色ブドウ球菌や、一部のインフルエンザ桿菌（BLNAR）に対して耐性があります。さらに、緑膿菌や肺炎桿菌、エンテロバクター属のすべての種に対しても無効です。近年では、以前は効果があった菌がβ-ラクタマーゼを獲得することによって、アモキシシリンが無効になるケースが増加しています。

形態と製剤

アモキシシリンは、経口摂取用としてカプセル、錠剤、散剤などの形態で入手可能です。また、アモキシシリンはβ-ラクタマーゼ阻害剤であるクラブラン酸カリウムと組み合わせて使われることが一般的です。この合剤は、グラクソ・スミスクライン社から「オーグメンチン」や「クラバモックス」という商品名で販売されています。特に「オーグメンチン」は、グラム陽性球菌や嫌気性菌に対して強い効果を持っています。

単剤と配合剤の違い

アモキシシリン単剤の使用と、クラブラン酸カリウムとの合剤の使用には重要な違いがあります。単剤の場合、1日量は20-40mg/kgが推奨され、3-4回に分けて投与する必要があります。一方、合剤では1日量は90mg/kgで、2回に分けて投与されます。このため、処方医の意図と薬剤師の疑義照会義務との間で問題が生じることがあります。

副作用

アモキシシリンに関連する副作用は、一般的にβ-ラクタム系抗生物質に共通するものが多く、吐き気や疲れやすさなどがあります。ただし、症状の現れ方は個人差があり、重篤な副作用は稀です。

まとめ

アモキシシリンは、その効果的な抗生物質として、多くの細菌感染の治療に利用されており、適切な使用が求められています。医療現場では、その作用や副作用を理解し、正しい使用法を守ることが重要です。

もう一度検索