アライアント・テックシステムズ

アライアント・テックシステムズ（ATK）

アライアント・テックシステムズ (Alliant Techsystems Inc., ATK) は、1990年から2015年まで活動したアメリカ合衆国の主要な航空宇宙、防衛、そしてスポーツ射撃用品を手がける企業でした。バージニア州アーリントン郡に本社を構え、全米22州やプエルトリコ、さらには海外にも拠点を展開していました。2014年度には47.8億ドルの売上を記録するなど、その活動規模は広範に及びました。

沿革と成長

ATKは1990年、ハネウェル社の防衛関連事業部門が分社化される形で設立されました。前身であるハネウェルの防衛事業は、半世紀以上にわたり米国と同盟国に対し防衛システムを提供し続け、第二次世界大戦中にB-17爆撃機向けの自動操縦装置を開発するなど、長い歴史と高い技術力を有していました。ATKは、この強固な基盤を引き継ぎつつ、積極的な企業買収を通じて事業領域を拡大していきます。

1995年には、ハーキュリーズ社の航空宇宙部門を獲得し、宇宙関連市場に参入を果たしました。これにより、米国政府やその協力企業に対して、航空宇宙および防衛製品群の供給を強化します。2001年には、スペースシャトル打ち上げ用固体燃料補助ロケットの供給元であったサイオコール社を買収し、後にATKランチ・システムズと改称しました（ただし、業界内では旧社名で呼ばれることも少なくありませんでした）。サイオコールの技術は、後のNASAのスペース・ローンチ・システムにも引き継がれています。また、同2001年にはブルント・インターナショナル社の弾薬事業も取得し、競技用や法執行機関向けの実包市場へも進出し、米国最大規模の弾薬メーカーへと成長しました。さらに、2009年にはイーグル・インダストリーズ、2010年にはブラックホーク・インダストリーズ・プロダクツ・グループを買収することで、警備および法執行関連市場への対応力も充実させていきました。

事業再編と終焉

2014年4月29日、ATKは取締役会において、大規模な事業再編と合併に関する決定を発表しました。具体的には、同社のスポーツ射撃用品事業を分離・独立させ、残る航空宇宙・防衛事業をオービタル・サイエンシズ社と合併させる計画です。この計画に基づき、スポーツ射撃用品事業はATKの株主に対して非課税で譲渡される形で分社化され、一方、航空宇宙・防衛部門の持分はオービタル・サイエンシズと統合されることになりました。合併後の新会社名はオービタルATKと決定されました。

しかし、この合併手続きは一部遅れが生じました。特に、2014年10月に発生したオービタル・サイエンシズのアンタレスロケットの爆発事故は、ATKの収益性や合併プロセスに影響を及ぼす可能性があったため、両社は事故の影響を評価するためのデューデリジェンス（適正評価手続き）を実施しました。これにより、当初予定されていた株主総会の日程も変更されることとなりました。

最終的に、2015年2月9日に事業再編が実行されました。スポーツ射撃用品事業は新たに設立された上場企業「Vista Outdoor」として分社化され、ユタ州に本社を置きました。同日、ATKの航空宇宙・防衛事業はオービタル・サイエンシズと正式に合併し、「オービタルATK」が誕生、同年2月20日から新会社として事業を開始しました。

主な事業グループ

ATKは、その活動期間中に主に以下の三つの事業グループを展開していました。

ATKエアロスペース

宇宙、国防、商用航空宇宙分野の製品・システムを担当するグループです。推進システムや複合材構造部材の開発・製造に強みを持ち、人工衛星、商用打ち上げ機、戦略ミサイル防衛システムの構成要素などを供給していました。ユタ州マグナに主要拠点を置いていました。主な活動例としては、NASAのスペース・ローンチ・システム向け先進ブースターの開発支援、エアバスA350やボーイング787といった最新旅客機向けの複合材部品供給、オリオン宇宙船の緊急脱出ロケットおよび耐熱材開発、ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡の構造部材製造などが挙げられます。また、デルタII、デルタIV、アトラスVといった主要ロケット向けに、GEM固体ロケットモーターや各種構造部材を供給していました。GEMモーターは、炭素繊維強化複合材を採用することで軽量化と高推力を実現したATKの主要製品の一つです。

ATKディフェンス

弾薬、精密誘導兵器、ミサイル警報システム、戦術ロケットモーターなどを手がけるグループです。小口径から大口径までの幅広い弾薬、対電波源追尾ミサイル（AARGM）、ミサイル警報・敵性攻撃検出システム（AN/AAR-47）、既存砲弾を精密誘導化するキット（PGK）、中口径砲システム（ブッシュマスターシリーズ）など、多岐にわたる製品を開発・供給していました。また、ミズーリ州にある米国最大の陸軍向け小口径弾薬工場であるレイクシティ陸軍弾薬工場（LCAAP）の運営を、長年にわたり米国陸軍から受託していました。特にブッシュマスター機関砲シリーズは、M242、Mk 44、開発中のXM813などがあり、世界中の装甲戦闘車両や艦艇、航空機に広く採用されているATKディフェンスの代表的な製品群でした。

ATKスポーティング

世界中のスポーツ射撃愛好家、法執行機関、軍隊向けに様々なブランドを展開していたグループです。ライフル、ショットガン、各種弾薬（センターファイヤ式、リムファイヤ式）、狩猟・射撃競技・アウトドア関連アクセサリ、照準器、銃器整備用品、訓練場設備、装備品、火薬などを提供していました。Federal Premium、Bushnell、Savage Arms、BLACKHAWK!など、多くの著名なブランドを傘下に収め、2013年時点ではATK全体の売上の約45%を占めるほどの規模でした。このスポーティンググループは、2015年の事業再編時にVista Outdoorとして分社化されました。

ATKは、設立から終焉までの短期間に、積極的なM&Aと技術開発を通じて、航空宇宙、防衛、スポーツ射撃といった多様な分野で significant な存在感を確立しました。その事業と技術遺産は、合併・分社化されたオービタルATK（後のノースロップ・グラマン・イノベーション・システムズ）とVista Outdoorに引き継がれています。

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