アラン・ポエール

アラン・ポエール：フランス政治史に名を刻んだ元老院議長

アラン・エミール・ルイ・マリ・ポエール (1909年4月17日 - 1996年12月9日) は、フランスの中道派政治家として、20世紀後半のフランス政治に大きな足跡を残しました。 そのキャリアは、財務省での官僚経験から始まり、地元ヴァル＝ド＝マルヌ県のアブロン＝シュル＝セーヌ市長を経て、1952年に元老院議員に選出されることで本格的に始まります。長きに渡り元老院議員を務め、1968年から1992年まで元老院議長という要職にも就きました。

二度の臨時大統領職務

ポエールの名前が世界的に知られることになったのは、大統領代行としての経験でしょう。フランス第五共和政憲法では、大統領の空位の場合、元老院議長が大統領職務を代行することになっており、ポエールはこの規定により、歴史的な出来事に関与することになります。

まず1969年、シャルル・ド・ゴール大統領の辞任に伴い、大統領代行の重責を担いました。ド・ゴールとは政治的対立関係にありましたが、大統領代行としては、国民投票の結果を受けたド・ゴールの辞任後、混乱を収拾し、次期大統領選挙の円滑な実施に尽力しました。この期間、彼はエリゼ宮殿に住み、元老院議長としての職務も続けました。当初、マリ＝ピエール・ケニッグへの大統領候補擁立を試みましたが、ケニッグの辞退により、自ら大統領選挙に立候補しました。選挙戦ではジョルジュ・ポンピドゥーの最大の対抗候補として注目を集めましたが、最終的にはポンピドゥーに敗れました。

しかし、大統領代行としての彼の活動は高く評価されました。例えば、ド・ゴールの側近であったジャック・フォカールを解任し、公共メディアの中立性を確保するための指示を出すなど、重要な決断を下しました。また、モーリス・クーヴ・ド・ミュルヴィル首相との協力関係も築き、安定した政権運営に貢献しました。この期間は、後に「第1次コアビタシオン」と呼ばれることもあります。

1974年には、ジョルジュ・ポンピドゥー大統領の急死を受けて、再び大統領代行を務めました。しかし、今回は大統領選挙への立候補をせず、ヴァレリー・ジスカール・デスタンへの大統領職務の引き継ぎを行い、穏やかな権力移譲を実現しました。

ヨーロッパ統合への貢献

ポエールは、ロベール・シューマンと長年協力関係にあったことから、ヨーロッパ統合にも熱心に取り組んでいました。1968年から1969年にかけては欧州議会議長も務め、欧州統合推進に大きく貢献しました。

まとめ

アラン・ポエールは、財務省でのキャリア、地方政治、元老院議員としての長年の活動、そして二度の大統領代行という経験を通して、フランス政治に大きな影響を与えました。大統領選挙で敗れたにもかかわらず、大統領代行としての優れた手腕と、ヨーロッパ統合への尽力は、彼の政治家としての功績を高く評価するのに十分なものです。彼の生涯は、フランスの政治制度やヨーロッパ統合の歴史を理解する上で重要な要素となっています。 政治的立場や主義主張を超越して、フランスの民主主義の維持・発展に貢献した稀有な政治家と言えるでしょう。

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