アリー・セブ

アリー・セブ（Ali Saibou, 1940年6月17日 - 2011年10月31日）は、ニジェールの軍人、政治家であり、同国の第3代元首を務めました。最終階級は少佐およびフランス陸軍軍曹でした。

生い立ちと軍歴

セブはジェルマ人として、ニアメ北方300kmに位置するワラムの町に近いディンガジバンバ村で生まれました。彼は軍人の道を目指し、セネガルのサンルイにある学校に進学後、Senegalese Tirailleursに入隊しました。1960年にはカメルーンでの軍事行動に従軍し負傷。同年ニジェールが独立すると、セブは軍曹として新設されたニジェール国軍に入隊しました。1969年にはンギグミの部隊に、1973年にはアガデスの部隊に異動し、そこで大尉に昇進しました。

1974年4月のセイニ・クンチェによるクーデターでは、セブはクンチェに協力してアガデスから首都ニアメへと進軍し、クーデターの成功に貢献しました。その功績により少佐へと昇進し、1974年11月20日には農村経済・環境大臣として入閣、参謀長にも就任しました。

クンチェ政権下での動向

しかし、クンチェはセブを警戒し、1975年6月に大臣職と陸軍における指揮権の放棄を要求しました。セブがこれを受け入れたことで、クンチェの警戒心は薄れ、以後セブはクンチェの部下として忠誠を尽くし、1987年11月10日にクンチェが死去するまでその関係は続きました。

元首就任と民政移管

クンチェの死後、参謀長であったセブが後継者となり、1987年11月14日に最高軍事評議会議長に就任しました。元首となったセブは、最高軍事評議会による軍政から民政移管を目指し、1989年1月に単一政党として社会発展国民運動（MNSD）を結成しました。同年12月には新憲法下で大統領選挙を実施し、唯一の候補として立候補したセブが当選を果たしました。これにより形式的にはニジェールは民政復帰を果たしましたが、民主化には程遠い状況でした。

民主化運動の高まりと政界引退

1990年代に入ると、北部でトゥアレグ人との軍事衝突が発生し、首都ニアメでは学生デモが頻発するなど、民主化を求める運動が拡大しました。セブはこれを受け、複数政党制を導入することを余儀なくされました。1991年3月の党大会では軍の支持を得て党首の座を維持しましたが、同年11月には党首の座をタンジャ・ママドゥに譲りました。そして、1993年の大統領選挙で野党の民主社会会議のマハマヌ・ウスマンが当選すると、セブは政界から引退し、故郷の村へと帰りました。

死去とその後

2011年10月31日、アリー・セブは首都ニアメで死去しました。彼の死を悼み、ニジェールでは3日間の服喪期間が設けられました。

アリー・セブは、ニジェールの政治において重要な役割を果たした人物であり、軍事政権から民政への移行期を主導しましたが、民主化への道のりは困難を極めました。

もう一度検索