セイニ・クンチェ

セイニ・クンチェ：ニジェールの軍事指導者

セイニ・クンチェ（Seyni Kountché、1931年7月1日 - 1987年11月10日）は、ニジェールの軍人であり、政治家でした。1974年のクーデターで初代大統領のアマニ・ディオリを追放し、1987年に亡くなるまでニジェールの大統領として国を率いました。首都ニアメには、彼の名を冠したスタッド・ジェネラル・セイニ・クンチェという競技場があります。最終階級は陸軍少将でした。

生い立ちと軍歴

クンチェは1931年にダママ・ファンドゥ村で、ジェルマ人として生まれました。1940年代にフランス植民地軍に入隊し、1957年には軍曹に昇進しました。1960年8月3日にニジェールがフランスから独立すると、ニジェール軍に移籍し、1965年から1966年にかけてパリの士官学校に留学した後、陸軍参謀長に就任しました。1973年には、陸軍のトップに上り詰めました。

クーデターの背景

当時のニジェールは、アマニ・ディオリによる一党独裁体制下にあり、社会は混乱していました。1968年から続く旱魃は1974年になっても状況は改善せず、国民の不満が高まっていました。ディオリ大統領は、フランコフォニー国際機関などで外交的な成果を上げていましたが、国内問題への有効な対策を打ち出すことができず、ニジェール経済の主力となるウラン開発も始まったばかりでした。さらに、各国からの食糧援助を一部の閣僚が不正に横領し、私腹を肥やしたことが発覚し、国民の不満は頂点に達しました。

クーデターとその後

1974年4月15日、クンチェはクーデターを実行し、ディオリ大統領を追放して政権を掌握しました。4月17日には最高軍事評議会を設立し、その議長に就任すると、憲法と国会を停止し、政党を禁止しました。一方で、それまで収監されていたすべての政治犯を釈放しました。ディオリはクーデター後、軟禁状態に置かれ、1980年まで解放されることはありませんでした。最高軍事評議会は、援助食糧の配給を通じて社会生活の回復に尽力しました。政党は禁止されましたが、ディオリ政権下で禁止されていた他政党の関係者の帰国は妨げられなかったため、ジボ・バカリなど旧野党の政治家が帰国しました。

施政と課題

クンチェの政策は、特定のイデオロギーに偏らず、経済状況の改善を最優先課題として、西側諸国との関係を重視した経済開発政策を採用しました。ウラン開発を積極的に推進し、アクータ鉱山などの操業が軌道に乗ったことで、1970年代後半から1980年代初頭にかけてニジェール経済は成長を続けました。降雨も回復し、1980年には食糧自給を達成しました。フランスとの友好関係は維持されましたが、ニジェール駐在のフランス軍は撤退し、やや冷却化しました。一方で、アラブ諸国との友好関係が強化されました。しかし、北隣のリビアとは対立し、1981年1月にはリビアのチャド侵攻（トヨタ戦争）を機に国交を断絶しましたが、1982年には国交を回復しました。

しかし、最高軍事評議会内部での意見対立が表面化し、1975年8月2日には政権ナンバー2であった副議長のサニ・ソウナ・シドと野党指導者のジボ・バカリがクーデター容疑で逮捕されました。1976年3月15日にも別のクーデター計画が発覚しました。

1981年、クンチェは最高軍事評議会に文民を迎え入れ、1982年には憲法上の政治体制を変更し、1983年1月24日には首相に文民のママヌ・ウマルを任命しました。1983年10月には軍部内で再びクーデターが発生しましたが、クンチェは軍の多数派を掌握しており、クーデターは鎮圧されました。1984年には、憲法の前文にあたる国民憲章を発表しました。この憲章では、国と地方に選挙によらない諮問機関を設けることが定められました。

1984年から1985年にかけて再び大干ばつが発生し、ウランブームの終焉と、南隣のナイジェリアとの国境紛争による国境閉鎖（1986年まで）によって経済は再び悪化しました。さらに、リビアとの関係も悪化し、リビアと親しい北部のトゥアレグ人とクンチェ政権との関係も悪化し、1985年には両国国境が閉鎖され、ニジェール国籍を持たないすべてのトゥアレグ人が国外に追放されました。

死去

クンチェは1986年から体調を崩し、1987年11月10日にパリの病院で脳腫瘍により死去しました。政権は、新たに最高軍事評議会議長となったアリー・セブが引き継ぎました。

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