アリー・リダー

イマーム・アリー・アッ＝リダー：シーア派の聖人

アリー・アッ＝リダー（766年 - 818年）は、シーア派・十二イマーム派における第8代イマームであり、その名は「神の رضا（ رضىٰ、riḍā）」に由来します。彼は、その知恵、敬虔さ、そして政治的な苦難によって、シーア派信徒から深く尊敬されています。

生涯

アリー・アッ＝リダーは、第7代イマーム・ムーサー・アル＝カーズィムの子として、マディーナで生まれました。父の死後、35歳でイマームの地位を継承しましたが、当時のアッバース朝カリフ、ハールーン・アッ＝ラシードからは冷遇され、信徒との交流も制限されました。

ハールーン・アッ＝ラシードの死後、アッバース朝は内戦状態に陥ります。カリフとなったマアムーンは、シーア派の支持を得るため、アリー・アッ＝リダーを自身の後継者に指名しました。さらに、アッバース朝の象徴であった黒旗を、アリー家ゆかりの緑色に変更するなど、異例の厚遇を示しました。

しかし、アリー・アッ＝リダーは、マアムーンより早く818年に亡くなりました。その死は毒殺によるものとする説が有力であり、シーア派信徒は彼を殉教者として崇敬しています。

聖地マシュハド

アリー・アッ＝リダーの遺体は、現在のイラン北東部に位置する都市マシュハドに埋葬されました。マシュハドは、「リダーの殉教地」を意味し、彼の霊廟を中心とした巨大な複合施設（アースターネ・クドゥス）が建設され、今日では年間数百万人の巡礼者が訪れるシーア派最大の聖地のひとつとなっています。

伝承

アリー・アッ＝リダーは、多くの知恵の言葉を残しています。以下にその一部を紹介します。

「アッラーのために愛し、アッラーのために嫌い、アッラーのために喜捨を差し出す者は、信仰が完璧な人々の一人である。」
「過剰な富の蓄えは、度を越えた欲深さ、大きな期待、非常に強い貪欲、血族との縁切り、来世より現世を好むという五つの特徴による。」
「ムスリム信徒は、主の作法、預言者の作法、イマームの作法の三つの美徳をもたなければ真の信者ではない。」

精神的遺産

アリー・アッ＝リダーは、その短い生涯の中で、シーア派の信仰と精神に深い影響を与えました。彼の教えは、信徒たちに敬虔さ、謙虚さ、そして困窮者への慈悲の心を育むことを奨励しています。また、彼の殉教は、シーア派信徒にとって、不正に対する抵抗と信仰の重要性を象徴するものとなっています。

マシュハドにそびえ立つ彼の聖廟は、今もなお、多くの人々に希望と慰めを与え続けています。

参考文献
Bayhom-Daou, Tamima (2009). "ʿAlī al-Riḍā". In Fleet, Kate; Krämer, Gudrun; Matringe, Denis; Nawas, John; Rowson, Everett. Encyclopaedia of Islam (3rd ed.). Brill.
A Brief History of The Fourteen Infallibles.(2004),Ansariyan Publications.
Madelung, Wilfred (1985). "ʿAlī Al-Reżā". In Yarshater, Ehsan. Encyclopædia Iranica. New York: Bibliotheca Persica Press.

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