アルギシュティ2世

アルギシュティ2世：苦難の時代を生き抜いたウラルトゥの王

アルギシュティ2世は、紀元前714年から685年にかけてウラルトゥ王国を統治した王です。父であるルサ1世の跡を継ぎましたが、その治世は決して平穏なものではありませんでした。

アッシリアの脅威と国内の混乱

アルギシュティ2世が王位を継承した背景には、アッシリア帝国の侵攻によるウラルトゥの国力衰退がありました。父ルサ1世は、アッシリアのサルゴン2世に敗北し、失意のうちに亡くなったとされています（自殺説もあります）。主神ハルディ信仰の中心地であったムサシルが攻略されたことは、ウラルトゥの人々に大きな精神的打撃を与えました。

アッシリアは、ウラルトゥに対し、領内通過の自由、鉄鉱山の採掘権、森林の伐採権などを要求し、農産物や金属などの貢納も課していました。このような状況から、一部の学者はこの時代のウラルトゥをアッシリアの属国とみなしています。アルギシュティ2世は、アッシリアとの緊張関係を維持しながらも、表面的には平和な関係を保つことを余儀なくされました。

北方への活路と灌漑事業

苦境に立たされたアルギシュティ2世は、王国の活路を北方のトランスコーカサス地方に求めました。また、ヴァン湖の北岸地方では灌漑水路を整備し、果樹園を造成しました。これらの事業は、王国の経済基盤を強化し、人々の生活を安定させることを目的としていたと考えられます。碑文によれば、彼は東方への遠征も行っています。

イラン領内のアゼルバイジャン地方では、アルギシュティ2世が残した碑文が発見されています。カスピ海地方への遠征については議論が分かれていますが、考古学的な調査結果からは、ウルミア湖以遠にウラルトゥの勢力が及んでいたとは考えにくいとされています。

アッシリアとの関係安定化とキンメリア人の脅威

紀元前705年にサルゴン2世が死去し、センナケリブがアッシリア王位を継承すると、アッシリアとウラルトゥの関係はより安定しました。しかし、南下する騎馬民族キンメリア人の脅威も出現し、ウラルトゥの勢威が再び盛り返すことはありませんでした。

アルギシュティ2世の死後、王位は息子のルサ2世が継承しました。

まとめ

アルギシュティ2世の治世は、アッシリアの圧力、国内の混乱、そして新たな脅威の出現など、困難な課題に直面した時代でした。彼は、北方への進出や灌漑事業を通じて王国の維持に努めましたが、ウラルトゥの勢威が完全に回復することはなく、次の時代へと引き継がれることになりました。

参考文献

Пиотровский Б. Б. Ванское царство (Урарту), Издательство Восточной литературы, Москва, 1959
（邦訳）『埋もれた古代王国の謎 幻の国ウラルトゥを探る』（ボリス・ボリソヴィッチ・ピオトロフスキー著　加藤九祚訳　岩波書店） ISBN 9784000001601 (4000001604)
Меликишвили Г. А. Урартские клинообразные надписи, Издательство АН СССР, Москва, 1960
Арутюнян Н. В. Биайнили (Урарту), Издательство Академии наук Армянской ССР, Ереван, 1970

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