アルグ・テムル

アルグ・テムルの歴史

アルグ・テムル（モンゴル語: Aruγ Temür、中国語: 阿魯輝帖木児）は、モンゴル帝国の皇族で、チンギス・カンの子孫であるオゴデイの末裔です。彼に関する記録は、中国の歴史書『元史』などで確認できますが、その詳細な生没年は不明です。

メリク王家の背景

アルグ・テムルの先祖はオゴデイ・カアンの末子、メリクでした。メリクの家系は代々、イルティシュ川流域を遊牧地として利用していました。一時的にカイドゥ・ウルスの統治下にあったものの、カイドゥの死後、その家系は大元ウルスに降伏し、「陽翟王」の称号を授けられました。これにより、彼らは新たな権力の一翼を担うことになります。

反乱の背景

ウカアト・カアン（順帝トゴン・テムル）の治世の真っ只中、江南地域では紅巾の乱が発生しました。ウカアト・カアンは北方モンゴリアに住む宗王たちに、叛乱軍を鎮圧するために軍を派遣するよう命じました。アルグ・テムルは、国家の統治が行き詰まっていることを察知し、数万の兵士を動員して他の王たちを脅し、ついにはウカアト・カアンに対して反乱を起こします。

彼はカアンに使者を送り、かつては祖先が天下を授けられたのに、カアンが多くの領土を失ってしまったことを指摘し、国璽を与えるよう要求しました。これに対し、ウカアト・カアンは冷静に対応し、知枢密院事の禿堅帖木児に反乱鎮圧を命じました。

戦闘と敗北

禿堅帖木児は軍を指揮してアルグ・テムルと対峙しましたが、戦闘が始まる前に配下の兵士たちが脱走してしまいました。そのため、禿堅帖木児は苦戦を強いられ、結局敗北して上都に逃げ帰りました。この出来事はアルグ・テムルの勢力拡大の一因となります。

その後、ウカアト・カアンはさらなる攻撃を計画し、知枢密院事ラオジャンに十万の軍を持たせて送り込みました。また、アルグ・テムルの弟クトゥク・テムルをも味方に引き入れ、彼を指導役として活用し、鎮圧軍に加わらせました。

元軍はこのようにしてアルグ・テムル軍を撃破することに成功します。アルグ・テムルは逃げようとしましたが、彼の動きを察知した武将の脱驩らに捕らえられ、最終的にはウカアト・カアンの命により処刑されました。

結果と影響

アルグ・テムルの討伐に成功したことで、ウカアト・カアンはラオジャンをさらなる地位に昇進させ、クトゥク・テムルには陽翟王の称号を与えました。このようにして、元朝は内部の反乱を抑える体制を強化し、さらなる対立の防止に努めました。これらの出来事はモンゴル帝国の歴史において重要な意味を持ち、アルグ・テムルの反乱は、権力争いの複雑さと時代の変化を象徴するものとなります。

参考文献

• - 杉山正明『モンゴル帝国と大元ウルス』
• - 松田孝一「オゴデイ諸子ウルスの系譜と継承」
• - 村岡倫「オゴデイ＝ウルスの分立」

もう一度検索