アルサケス1世

アルサケス1世

アルサケス1世（在位：紀元前247年頃 - 紀元前211年頃）は、パルティア王国の初代王として知られています。彼の名は王朝名であるアルサケス朝の由来となり、遠く中国では「安息」と音訳されました。パルティア語ではアルシャクと発音されたと考えられています。歴代の王は彼の名を称号として用いました。

生涯

アルサケス1世の出自は明確には分かっていません。バクトリア出身で、総督ディオドトスの支配に不満を持ち、パルティアへ侵入し住民を扇動して反乱を起こしたという説や、フリアピテスの息子アルサケスの子孫であるという説も存在します。

セレウコス朝のセレウコス2世がアシアでガリア人に敗れたという情報を受け、アルサケスは兄弟のティリダテスと共に盗賊団を率いてパルティア州へ侵攻、総督アンドラゴラスを討ちました。アスタウエネのアサアクで王冠を授けられ、ここにアルサケス朝パルティア王国が誕生しました。

その後、ヒュルカニアを制圧し、パルティアとヒュルカニアという二つの勢力圏を掌握しました。当初、バクトリアのディオドトス1世を警戒していましたが、紀元前234年にディオドトス1世が没すると、後を継いだディオドトス2世と和睦を結び、セレウコス朝との対決に備えました。紀元前227年頃には、東進してきたセレウコス2世を撃退し、勝利を宣言。パルティアの人々はこの日を「自由の始まり」として祝ったと伝えられています。

セレウコス2世が新たな騒乱によってアシアへ引き返すと、アルサケス1世は軍の再編を行い、防衛のための城砦を築きました。また、ダラという名の都市をアパオルテノン山に建設しました。この地は周囲を険しい崖に囲まれた天然の要害であり、周辺は肥沃で泉や森が豊富、狩猟にも適した快適な場所であったとされています。

紀元前211年頃、老齢のため崩御し、息子のアルサケス2世が王位を継承しました。彼の死後、アルサケスの名はパルティア王の称号として代々受け継がれ、その功績は長く記憶されることとなりました。

参考文献

ニールソン・C・デベボイス『パルティアの歴史』（小玉新次郎、伊吹寛子 訳、山川出版社、1993年）、ISBN 4634658607
ポンペイウス・トログス / ユスティヌス抄録『地中海世界史』（合阪學 訳、京都大学学術出版会<西洋古典叢書>、1998年）、ISBN 4876981078
* ポリュビオス『ポリュビオス 歴史3』（城江良和 訳、京都大学学術出版会<西洋古典叢書>、2011年）、ISBN 9784876981922

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