アルド・カステラーニ

アルド・カステラーニ（Aldo Castellani）

アルド・カステラーニは、1877年9月8日にイタリアのフィレンツェに生まれ、1971年10月3日にその生涯を終えた、傑出したイタリアの病理学者および細菌学者です。特に熱帯病の研究において多大な貢献をしました。

フィレンツェで教育を受けた後、1899年に医学の学位を取得しました。その後、ボンでの短い期間を経て、1901年にはロンドンの公衆衛生・熱帯医学大学に入学し、熱帯病研究の道へ本格的に進みます。彼の名を高める最初の大きな成果は、1902年に王立協会のアフリカ睡眠病調査団の一員として、ジョージ・カーマイケル・ローやカスバート・クリスティと共にウガンダのエンテベへ派遣された際に生まれました。現地で、アフリカ睡眠病患者の髄液からトリパノソーマという微生物を発見し、これが病気の原因であることを特定したのです。この発見は、アフリカ睡眠病の治療と予防法の開発に重要な一歩となりました。さらに、彼はフランベジア（森林梅毒）と呼ばれる皮膚病の病原体がスピロヘータであることを突き止めるなど、細菌学や皮膚の寄生虫病の分野でも優れた業績を挙げました。

1903年、カステラーニはスリランカ政府に招かれ、コロンボ中央研究所の細菌学者に就任しました。ここでは菌類や細菌学の研究を精力的に続け、特にいくつかの腸内細菌について詳細な記載を行いました。また、微生物の血清学的同定を効率化する新しい試験法を開発するなど、診断技術の進歩にも寄与しました。

1915年にスリランカを離れた後、イタリアに戻り、ナポリ大学で医学教授として教鞭をとりました。第一次世界大戦中は、セルビアやマケドニアの衛生委員会メンバーとして、戦地における衛生環境の改善や感染症対策に尽力しました。

戦後の1919年には再びロンドンへ渡り、イギリス年金省のコンサルタントを務める傍ら、かつて学んだロンドン公衆衛生・熱帯医学大学で菌類学および菌症に関する講義を担当しました。また、自身の診療所を開設し、臨床医としても活動しました。彼の功績はイギリスでも認められ、1928年には聖マイケル・聖ジョージ勲章のナイトコマンダー（KCMG）を授与されました。この時期には、イギリス人貴族の娘と結婚し、個人的な結びつきも強まりました。

しかし、彼の経歴には政治的な側面も影を落としました。イタリアのファシスト党党首であったベニート・ムッソリーニを含む著名な人々を熱心に診察したため、第二次世界大戦が勃発すると、彼はイタリア軍医療サービスのチーフに就任し、結果としてイギリスでの評判が低下しました。

戦後もカステラーニは国際的な活動を続けました。1959年に設立された国際皮膚科学学会では、1960年から1964年まで会長を務め、皮膚病学の発展に貢献しました。また、アメリカのルイジアナ州立大学で熱帯医学の教授を務めるなど、晩年も教育者・研究者として活躍しました。

著作としては、『Manual of tropical medicine』（A. J. Chalmersとの共著、1910年）、『Fungi and fungous diseases』（1928年）、『Climate and acclimatisation』（1938年）など、熱帯医学や菌類学に関する多くの専門書を執筆しました。また、自伝『Microbes, Men and Monarchs: A Doctor's Life in Many Lands』も出版しています。

家族としては、娘のジャクリーン・カステラーニ（1910年 - 2015年）がおり、彼女は1934年にイギリスの政治家・外交官であるマイルズ・ランプソンの後妻となりました。ジャクリーンはヴィクター・マイルズ・ジョージ・オルダス・ランプソン（第3代キラーン男爵）、ジャケット・ジェーン・フレデリカ・ランプソン（第10代セント・ジャーマンズ伯爵ペレグリン・エリオット夫人）、ロクサーナ・ローズ・キャサリン・ネイラ・ランプソン（イアン・ロス夫人）らの母となりました。

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