アルバニア王国 (近代)

アルバニア王国：バルカン半島の近代化と激動の時代

アルバニア王国（1928年-1944年）は、バルカン半島に存在した短命な君主国です。この国家は、1928年にそれまでのアルバニア共和国大統領であったアフメト・ゾグーが国王に即位することで誕生しました。しかし、その歴史は、近代化への試みと、イタリアによる侵略、そして第二次世界大戦による混乱という、激動の時代によって彩られています。

ゾグー1世による近代化政策

ゾグー1世は、即位後、国内の不安定な情勢を安定させるため、民族の武装解除や法整備を積極的に推進しました。アルバニアは、それまで民族主義的な対立が激しく、近代国家としての基礎が脆弱な状態でした。ゾグー1世は、中央集権化を進め、国家機関の整備、インフラ整備を通して、近代国家建設を目指しました。特に経済面では、それまでバルカン半島で最小規模だったアルバニア経済を飛躍的に発展させようと尽力しました。大規模な近代化政策は、アルバニア経済の規模を大きく拡大させ、一時的に大きな経済成長を遂げました。しかしながら、世界恐慌の影響や、内在する経済的問題は依然として課題として残りました。

イタリアの侵略と第二次世界大戦

1939年、イタリア王国はアルバニアに侵攻し、ゾグー1世は国外に亡命を余儀なくされました。アルバニアはイタリアの保護国となり、イタリア国王がアルバニア王を兼ねる同君連合となりました。しかし、これは名ばかりの連合であり、実質的な支配権はイタリアに握られました。イタリアの支配下では、親イタリア政権が成立し、アルバニアの主権は完全に失われました。1940年にはイタリアがギリシャに侵攻したため、アルバニア南部は戦場と化し、多くの犠牲者が出ました。さらに、1941年には枢軸国のユーゴスラビア侵攻に伴い、アルバニアの領土は一時的に拡大し、コソボや一部のマケドニア、ギリシャ南部などを含む「大アルバニア」が形成されましたが、これはあくまでも形式上の拡大であり、実際には支配が不安定な状況でした。

1943年、イタリアが連合国に降伏すると、今度はドイツ軍がアルバニアを占領しました。ドイツ軍政の下で親ドイツ政権が成立しましたが、アルバニア国民の間ではレジスタンス運動も活発化しました。一部のアルバニア人の中には、ナチスに協力し、セルビア人やユダヤ人に対する迫害に加担した者もいましたが、すべてのアルバニア人がドイツに協力したわけではなく、ユダヤ人の保護に協力した人々も存在しました。

王国の終焉と共産主義政権

1944年11月、アルバニアはパルチザンとソ連軍によって解放されました。ソ連の支援を受けたアルバニア共産党が中心となり、臨時政府が樹立されました。ゾグー1世は亡命生活を送った後、1961年に亡くなりました。1946年には王政が廃止され、アルバニア人民共和国が成立。エンヴェル・ホッジャ率いる共産主義政権が誕生しました。アルバニア王国は、わずか16年の歴史に幕を閉じました。

経済状況

ゾグー1世の治世下では、アルバニアの経済は近代化政策によって発展を見せました。しかし、世界恐慌やイタリアの侵略、そして第二次世界大戦によって経済は大きな打撃を受けました。戦後の共産主義政権下では、アルバニアは計画経済体制に移行し、貧困と経済的停滞に苦しむこととなります。資源は豊富であったものの、産業が未発達であったため、輸出は毛皮、チーズ、家畜などに限られており、食料や工業製品の輸入に大きく依存していました。特に、イタリアへの経済依存が著しく、イタリアの工業製品はアルバニア輸入の40%を占めていました。この経済的脆弱性が、イタリアの侵略を許す一因にもなったと言えるでしょう。

まとめ

アルバニア王国は、近代化への努力と、国際情勢の激変が複雑に絡み合った短い歴史を持つ国家でした。ゾグー1世による近代化政策は、一定の成果を上げましたが、イタリアの侵略と第二次世界大戦によってその努力は水の泡となり、アルバニアは再び貧困と混乱の時代へと突入していきます。この国の歴史は、バルカン半島における国家形成の困難さと、大国間の対立がもたらす悲劇を改めて示すものです。

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