アルバロ・アルス

アルバロ・アルス：グアテマラ内戦終結に導いた政治家

アルバロ・エンリケ・アルス・イリゴージェンは、グアテマラの政治家であり、グアテマラシティ市長（1986年-1990年、2004年-2018年）とグアテマラ大統領（1996年-2000年）を務めました。彼は、36年にも及ぶグアテマラ内戦を終結させたことで、その名を知られています。

生涯

1946年、アルバロ・アルスはグアテマラシティで、スペイン・バスク系のヨーロッパ系エリート階級の家庭に生まれました。1970年には、イエズス会系のラファエル・ランディバル大学で法学・社会学部を卒業。1978年には、ロメオ・ルカス・ガルシア大統領の時代にグアテマラ政府観光局（INGUAT）の局長に就任しました。

市長として

1981年、アルスはキリスト教民主党（DCG）と国民刷新党（PNR）からグアテマラシティ市長選に出馬し当選しますが、エフライン・リオス・モントのクーデターにより選挙は無効となります。その後、「国民進歩計画」市民団体を結成し、1985年に再びグアテマラシティ市長選に出馬して当選。1986年1月に市長に就任しました。

1989年には、アルスの市民団体が国民進歩党（PAN）として正式に承認されます。この党は、グアテマラ経団連（CACIF）との繋がりが強いことで知られていました。1990年の大統領選挙では国民進歩党から立候補しましたが、17%の得票で4位に終わりました。

大統領として

1995年、アルスは再び国民進歩党から大統領選挙に出馬し当選。1996年1月14日に大統領に就任します。大統領就任後、アルスはURNGゲリラとの和平合意締結に尽力し、1996年12月29日に和平合意が調印されました。1997年3月3日には、国際連合グアテマラ人権監視団（MINUGUA）の監視下でゲリラの武装解除が開始されました。

内戦中の残虐行為を明らかにするため、真相究明委員会（CEH）が設立され、カトリック教会によって歴史的記憶回復プロジェクト（REMHI）も開始されました。真相究明委員会は1999年2月に報告書『グアテマラ、沈黙の記憶』を発表し、1960年から1996年までの間に、軍と準国家組織によって20万人以上のグアテマラ人が殺害または行方不明になったと結論づけました。その9割は非戦闘員であり、多くが先住民でした。

内戦終結後も、軍部による残虐行為や政治的な殺人は完全にはなくなりませんでした。1998年4月には、カトリックのキチェ教区元司教であるフアン・ヘラルディが暗殺される事件が発生しました。彼はグアテマラ軍情報部がマヤ人に対して行った残虐行為に関する報告書の作成に関与したために殺害されたとされています。

経済政策においては、新自由主義的な政策を採用し、自由市場における民間企業の発達を重視しました。電気、電話、航空、鉄道など多数の国営企業を民営化。1998年10月にハリケーン・ミッチに襲われたにもかかわらず、アルスの時代にGDPは3%成長し、インフレ率は5%に抑えられました。

外交面では、1998年1月にキューバとの関係を38年ぶりに回復。1999年3月には、アメリカ合衆国大統領ビル・クリントンが中米首脳会談のためにグアテマラを訪問し、アメリカがグアテマラの軍事独裁政権による残虐行為に加担していたことを謝罪しました。

市長再任と晩年

大統領退任後、2002年に統一党（PU）を設立。2004年1月に再びグアテマラシティ市長に就任し、没するまで4期連続で市長を務めました。2017年には、グアテマラ無処罰問題対策国際委員会（CICIG）によって汚職の罪で告発されています。

2018年4月、グアテマラシティ郊外で息子とゴルフをしている最中に心臓発作で急死。72歳でした。

栄誉

グアテマラ内戦を終わらせた功績により、ユネスコのフェリックス・ウフェ＝ボワニ平和賞、アストゥリアス皇太子賞（国際協力部門）など、数々の賞を受賞しています。

アルバロ・アルスは、グアテマラの歴史において、内戦終結という大きな功績を残した重要な人物として記憶されています。

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