アルバート・スポルディング

アルバート・グッドウィル・スポルディング（1850年9月2日 - 1915年9月9日）は、アメリカ合衆国イリノイ州出身のプロ野球選手、監督、そして企業家です。右投右打で、プロ野球黎明期に圧倒的な活躍を見せ、6年連続最多勝という偉業を達成しました。また、スポーツ用品メーカー「スポルディング社」の創業者としても知られています。

選手としての輝かしいキャリア

15歳で野球を始めたスポルディングは、その才能をすぐに開花させました。アマチュアチームでの活躍を経て、1871年にボストン・レッドストッキングス（現在のアトランタ・ブレーブス）に入団し、プロ野球の世界へ足を踏み入れます。当時最強を誇ったレッドストッキングスで、スポルディングはエースとして活躍し、1871年から1875年の5年間で205勝を挙げました。打者としても優れており、1872年には打率.354を記録するなど、投打にわたる活躍を見せました。

特に1874年と1875年は、スポルディングのキャリアの絶頂期でした。1874年には71試合で52勝16敗、1875年には72試合で55勝5敗（54勝説もある）という驚異的な成績を残し、2年連続で50勝を達成しました。当時の野球界において、これほどの成績を残した投手は他にいません。

スポーツ用品ビジネスへの進出

選手として活躍する一方で、スポルディングはスポーツ用品ビジネスにも積極的に関わっていました。自身の会社「A.G.Spalding & Brothers」を設立し、野球用品の製造販売を手がけました。また、野球の普及活動にも熱心で、1874年にはイギリスとアイルランドへの野球普及ツアーを実施しました。さらに、野球の公式ルールガイドを発行するなど、野球の発展に大きく貢献しました。

監督兼任選手としての活躍

1876年、ナショナルリーグが創設されると、スポルディングはシカゴ・ホワイトストッキングス（現在のシカゴ・カブス）の監督兼任選手として迎えられました。同年4月25日の試合で、ナショナルリーグ史上初の完封勝利を記録し、この年は47勝12敗、防御率1.75で、ナショナルリーグ初の最多勝利投手となりました。1872年から1876年までの年間平均勝ち星は46以上と、選手として最盛期を迎えていました。

しかし、長年の酷使が祟り、1877年には故障のため主に内野手として出場しました。翌1878年には、スポーツ用品ビジネスに専念するため、28歳という若さで現役を引退しました。わずか7年間の現役生活でしたが、252勝65敗、勝率.795という驚異的な記録を残しました。

引退後の活動と野球への貢献

引退後もスポルディングは、野球界への貢献を続けました。1882年から1891年まで、シカゴ・ホワイトストッキングスの理事長を務め、球団をリーグ屈指の強豪チームに育て上げました。また、野球のイメージ向上にも努め、ギャンブルや野次の排除に尽力しました。

1888年から1889年には、自身のチームを率いてハワイ、オーストラリア、エジプト、イタリア、イギリスなどを巡る野球普及のための世界ツアー「スポルディングのアラウンド・ザ・ワールド・ツアー」を実施しました。エジプトではピラミッドをバックネットに見立てて試合を行ったという逸話も残っています。

1905年には、野球の起源を調査する「ミルズ委員会」を設置し、1907年に「野球は1839年にアブナー・ダブルデイがクーパーズタウンで考案した」という説を発表しました。この「ダブルデイ説」は当時多くの支持を得ましたが、後に誤りであることが判明しました。

スポルディングは1915年、サンディエゴで死去しました。1939年には、野球殿堂入りを果たし、その功績は今もなお語り継がれています。

詳細情報

年度別投手成績

各年度の太字はリーグ最高、赤太字はMLB歴代最高

打撃成績

通算：411試合、1958打数613安打、本塁打2、打点327、打率.313

獲得タイトル・記録

最多勝利：6回（1871～1876年）
最優秀防御率：2回（1872年、1875年）
最多セーブ投手：1回（1875年）
通算防御率：2.13（歴代6位）

監督としての戦績

詳細な情報については、関連書籍や外部リンクを参照ください。

関連書籍

ピーター・レヴィーン『野球をビジネスにした男 スポルディングと大リーグ』平凡社,1987

外部リンク

Baseballhalloffame.org（英語） – アメリカ野球殿堂による紹介
MLB, ESPN, Baseball-Reference, Fangraphs, The Baseball Cube - 選手の通算成績と情報
* Baseball Library

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