アルファロメオ・8C

アルファロメオ8C：伝説のエンジンの歴史

アルファロメオの歴史において、8Cという名称は特別な意味を持ちます。これは、8気筒エンジンを搭載したモデルを指すものであり、同社の技術力と伝統を象徴する存在として、長きにわたり愛され続けてきました。

8Cエンジンの誕生と進化

8Cエンジンの起源は、1924年にヴィットリオ・ヤーノが設計したアルファロメオ初の直列8気筒エンジンに遡ります。1925年のグランプリで優勝したP2に搭載されたこのエンジンは、後の8Cシリーズへと繋がる重要な一歩となりました。しかし、P2は8Cとは名乗っていませんでした。

真に8Cの名を冠するエンジンは、1931年のミレ・ミリアで初めて登場します。このエンジンは、65×88mmのボア×ストロークを持つ2,336ccの直列8気筒で、6C1750と共通の寸法を採用していました。シリンダーヘッドはシリンダーブロックと一体構造となっており、ヘッドガスケットのトラブルを回避する設計が施されていました。ただし、その一方でバルブの整備性は悪くなっていました。カムシャフトやスーパーチャージャーなどの駆動には、中央に配置されたセントラル・ギア・タワーが用いられていました。

生産車においては、8C2300（1931年～1935年）と、ボア×ストロークを68×100mmに変更した、より高価で希少な8C2900（1936年～1941年）の2種類が製造されました。

レーシングカーへの搭載と成功

1930年代、レーシングカーのレギュレーションが変わり、メカニックの同乗が認められなくなりました。これを受けてアルファロメオは、シングルシーターのレーシングカーの開発に着手します。1931年に登場したティーポAは、2基の6気筒エンジンを搭載した複雑な構造でしたが、1932年にはヴィットリオ・ヤーノによって改良型のティーポB（P3）が誕生しました。2,665ccに排気量を拡大し、ツインスーパーチャージャーを搭載したティーポBは、圧倒的な性能でレースを席巻しました。このティーポBにも、8Cエンジンが搭載されていました。

市販車への展開とコーチビルダーとの協業

当初、アルファロメオは8Cエンジンの市販を予定していませんでしたが、1931年秋から、ルンゴ（ロング）とコルト（ショート）の2種類のホイールベースを持つシャシーとセットで販売を開始しました。顧客は、ザガート、カロッツェリア・トゥーリング、カロッツェリア・カスターニャ、ピニンファリーナ、ブリアンザといった数多くのイタリアのコーチビルダーから、好みのボディを選択することができました。アルファロメオ自身もボディ製作を手掛けており、さらにフィゴニなどのフランスやスイスのコーチビルダーが製作したボディも存在しました。中には、レーシングモデルをロードモデルに改造して販売されたものもありました。

8Cの復活

長い時を経て、2004年、アルファロメオは8Cという名前を復活させました。V8エンジンを搭載したコンセプトカー、そして2007年には市販車として「8Cコンペティツィオーネ」を発表しました。これは、8Cという名前が持つ伝統と、アルファロメオの技術力の高さを改めて世界に示すものとなりました。

まとめ

8Cエンジンは、アルファロメオの歴史において重要な役割を果たした、伝説的なエンジンのひとつです。その高い性能と、数々の名門コーチビルダーとのコラボレーションによって生み出された美しいボディは、多くの人々を魅了し続けています。8Cという名称は、アルファロメオの伝統と技術力の象徴であり、これからも受け継がれていくことでしょう。

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