アルフォンス・デーケン

アルフォンス・デーケン（Alfons Deeken, 1932年 8月3日 - 2020年 9月6日）は、ドイツ・オルデンブルク出身のイエズス会司祭であり、哲学者です。上智大学の名誉教授を務め、特に死生学の研究において、日本における先駆者として知られています。

生い立ちと青年期

デーケンは、ドイツのニーダーザクセン州で8人兄弟の3番目として生まれました。父親は実業家であり、デーケン自身も学校での成績が非常に優秀でした。ナチスの指導者養成学校に推薦されるほどでしたが、一家が反ナチス運動を行っていたため、この推薦を断りました。第二次世界大戦中には、日本二十六聖人の一人であるルドビコ茨木の伝記に触れ、日本での活動を志すようになります。また、終戦時には、連合軍を歓迎しようとした祖父が連合軍兵士に射殺されるという悲劇を目の当たりにしました。

イエズス会入会と来日

1952年、デーケンはイエズス会に入会し、東ヨーロッパや西ヨーロッパ各地での活動を経て、1959年に来日しました。1965年には司祭に叙階され、1973年にフォーダム大学で哲学博士号(Ph.D.)を取得。その後、上智大学文学部教授に就任しました。上智大学では、「死の哲学」「人間学」「生と死の教育」といった講座を担当しました。

死生学研究と社会活動

1982年頃から、デーケンは「死生観、死の準備教育」を提唱し、社会に大きな影響を与えました。同年には「生と死を考える会」を発足させ、終末期医療の改善やホスピス運動の発展に尽力しました。彼の研究は、日本における死のタブー視を打ち破り、死を人生の一部として捉える重要性を広く啓蒙するものでした。

上智大学退職後

2003年に上智大学を定年退職し、名誉教授となった後、ドイツへ一時帰国しましたが、その後再び来日し、日本各地で精力的に講演活動を行いました。ユーモアあふれる語り口は多くの人々を魅了し、80歳を超えてもなお、1日に2回以上講演を行うこともありました。また、書き下ろしの「ユーモア感覚のすすめ」は中学校の国語教科書にも掲載されました。

受賞と栄典

デーケンの功績は、数々の賞によって称えられています。1975年にアメリカ文学賞（倫理部門）を受賞したのをはじめ、1989年にはグローバル社会福祉・医療賞、1991年には全米死生学財団賞と菊池寛賞を受賞しています。また、1998年にはドイツ連邦共和国功労勲章、1999年には東京都文化賞と若月賞を受賞しました。

研究内容と業績

デーケンは、死生学における日本の第一人者であり、その研究は、日本における死のタブー視を覆し、死を人生の自然な一部として受け入れるための意識改革に大きく貢献しました。来日当初は、死に関する研究が大学内で存続を危ぶまれる状況もありましたが、生涯を通じてホスピスや終末期医療の普及に尽力しました。厚生省（厚生労働省）のオブザーバーとして有識者会議に参加し、癌患者への早期告知やホスピスへの移送を提唱しましたが、当時の日本では受け入れられにくい考え方でした。

著作

デーケンは、数多くの著書を執筆し、死生学の普及に貢献しました。

単著
『第三の人生　あなたも老人になる』
『デーケン教授の東西見聞録』
『中高年の危機と挑戦』
『人間性の価値を求めてマックス・シェーラーの倫理思想』
『キリスト教と私』
『ユーモアは老いと死の妙薬死生学のすすめ』
『死とどう向き合うか』
『生と死の教育』
『光のダイアローグ』
『よく生きよく笑いよき死と出会う』
『あなたの人生を愛するノート』
『心を癒す言葉の花束』

共編著
『未来の人間学』
『生と死を考える』
『旅立ちの朝に愛と死を語る往復書簡』
『身近な死の経験に学ぶ』
『死を教える死への準備教育』
『死を考える死への準備教育』
『死を看取る死への準備教育』
『いのちの終末死の準備と希望』
『伴侶に先立たれた時』
『老いと死をみつめて老いの生き方Q&A』
『日本のホスピスと終末医療』
『死への準備教育のための120冊』
『新しい死の文化をめざして』
『三人寄ればニッポンが見えるエレガンス・老いと死・ユーモア』
『<突然の死>とグリーフケア』
『愛と死を見つめる対話旅立ちの朝に魂を揺さぶる往復書簡』
『おとなのいのちの教育』
『いのちを語る』
『人生の終わりをしなやかに連続授業』

CD
アルフォンス・デーケン～死とどう向き合うか～CD6枚組～

晩年

アルフォンス・デーケンは、2020年に肺炎で亡くなりましたが、彼の残した功績は今もなお多くの人々に影響を与え続けています。彼のユーモアに満ちた人柄と、死に対する深い考察は、私たちがより良く生きるためのヒントを与えてくれます。

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