アルフォンソ・フェッラボスコ2世

アルフォンソ・フェッラボスコ2世

アルフォンソ・フェッラボスコ2世（Alfonso Ferrabosco the younger）は、1575年頃にグリニッジで生まれ、1628年3月11日に同じくグリニッジで没した、イングランドの著名な作曲家でありヴァイオル奏者です。彼は、同名のイタリア出身の音楽家でスパイでもあったアルフォンソ・フェッラボスコ1世を父に持ち、母は当初父の愛人であり後に再婚相手となったスザンナ・サイモンズでした。

幼少期は、エリザベス1世に仕えた廷臣ホーマー・ヴァン・オースターワイクの保護のもとで教育を受けました。父からはイタリアに移住して家族と共に暮らすよう勧められましたが、エリザベス1世がその才能を惜しみ手放さなかったため、イングランドに留まることになりました。1592年にオースターワイクが亡くなるまで、彼はその庇護下にありました。この頃には既に宮廷音楽家としての活動を開始しており、後にジェームズ1世の息子であるヘンリー王太子の音楽個人教師も務めるなど、宮廷音楽界で重要な役割を果たしました。

音楽作品においては、詩人ベン・ジョンソンと複数の企画で協力し、特に1605年の「悪魔のマスク」を含むいくつかの仮面劇（マスク）で音楽を担当しました。また、ジョン・ダンやトマス・キャンピオンといった同時代の著名な詩人による詩に曲をつけた歌曲は、1609年にジョン・ブラウンによって出版され、広く知られることとなりました。これらの声楽曲に加え、リュートのための作品やヴァイオル曲も数多く作曲しています。イタリアで過ごした経験はなかったにもかかわらず、彼の作品からは同時代のイタリア音楽、特にバロック音楽における新しい朗唱様式への関心や影響がうかがえます。

フェッラボスコ2世の名声は、ヴァイオル奏者としての卓越した技術に負うところが大きかったですが、ヴァイオル・コンソートの作曲家としての評価はそれを凌駕しました。彼のヴァイオル・コンソート作品は、多数の楽章を持ち、高度な演奏技巧を要求される華麗な旋律を特徴とする精緻なものです。例えば、彼もまたヴァイオル・コンソートのための優れた「イン・ノミネ」を数多く作曲しましたが、他の作曲家が複雑な対位法的な技巧を凝らす傾向があったのに対し、彼はそうした衒いよりも旋律の自由な展開を重視したスタイルで作曲しています。また、ジョン・コプラリオと並んで、リラ・ヴァイオル（lyra viol）という特殊な調弦を用いるヴァイオルのために最初期に作曲を行った人物でもあり、リラ・ヴァイオルのための教則本も執筆するなど、ヴァイオル音楽の発展に多大な貢献をしました。

音楽家としての成功とは対照的に、私生活では困難にも直面しました。テムズ川沿いの土地開発や補修といった利権に関わる事業計画が失敗に終わり、借金を抱えて苦しんでいた時期もありました。

アルフォンソ・フェッラボスコ2世は、イングランド・ルネサンス音楽末期から初期バロックにかけて活躍し、特にヴァイオル音楽の分野で独創的なスタイルと高い技術を示した重要な音楽家です。彼の作品は今日でも演奏され、研究されています。

彼の楽譜の一部は、国際楽譜ライブラリープロジェクト（IMSLP）で閲覧可能です。

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