アルフレード・フェラーリ

アルフレード・フェラーリ：夭折した天才とV6エンジンの系譜

アルフレード・フェラーリ（1932年1月19日 - 1956年6月30日）、愛称ディーノとして知られる彼は、フェラーリ創業者エンツォ・フェラーリの息子であり、類まれな才能を持つ自動車技術者でした。モデナの工業高校卒業後、ボローニャ大学で自動車工学を専攻。フェラーリに入社すると、V12エンジンが主流だった同社の将来を見据え、小型車向けのV6エンジン開発に着手します。

当時、ランチアからフェラーリに移籍した名エンジニア、ヴィットリオ・ヤーノと共に、F2レース用1.5リッターV6エンジンの開発に没頭しました。このエンジンはバンク角65度という革新的な設計でしたが、アルフレードは筋ジストロフィーにより24歳の若さでその生涯を閉じ、完成したエンジンを見ることなくこの世を去りました。彼の死は、跡継ぎとして彼に大きな期待を寄せていた父エンツォに深い悲しみをもたらし、エンツォは晩年まで息子の墓参りを欠かさなかったと言われています。

ディーノV6エンジンの誕生と発展

アルフレードが開発に携わったV6エンジンは、「ディーノV6」として知られるようになります。このエンジンは、1957年のフェラーリ156F2に搭載され、その後2.5リッターに排気量を拡大した246F1にも搭載。1958年には、このエンジンを搭載したマシンがドライバーズチャンピオンシップを獲得するという輝かしい成果を収めました。1961年にはF1レギュレーションの変更により排気量が1.5リッターに縮小されましたが、フェラーリは156F2をベースにした156F1で8戦中5勝を記録し、選手権を制覇しました。実戦では、バンク角を65度から120度に変更したタイプも使用されました。

1967年、ヤーノを中心に、F2用エンジンのホモロゲーション基準（6気筒以下、年間500機製造）を満たすための1,987cc V6エンジンの開発が行われました。しかし、当時のフェラーリには500台もの生産能力がなく、フィアットにエンジンの鋳造を委託。フェラーリは組み立てを担当し、このエンジンはディーノ206GTに搭載されました。エンジンブロックにはFIATの文字が刻印されているのが特徴です。

このエンジンを搭載したスポーツカーは「フィアット・ディーノ」として販売され、ベルトーネとピニンファリーナがそれぞれクーペとスパイダーのデザインを担当しました。1,987ccエンジンはホモロゲーション用であったため、アルミ製ブロックでしたが、その後コスト削減のため鋳鉄ブロックに変更され、排気量は2,418ccに拡大されました。このエンジンは、フィアット傘下のランチア・ストラトスにも使用され、その性能の高さが証明されました。

フェラーリ・ディーノ：小型車の新たなブランド

エンツォは当初、小型車すべてを「ディーノ」ブランドで販売する計画でした。実際にディーノの名を冠したフェラーリ車は、ディーノ206GT（1986cc）、ディーノ246GT/GTS（2418cc）です。これらのモデルはフェラーリ車でありながら、車体にはフェラーリのロゴは一切入っていませんでした。初期のフェラーリ308GT4もディーノ308GT4として販売されていました。その後、V8エンジン搭載車も「フェラーリ」ブランドで販売されるようになります。

フェラーリのノーズエンブレムが縦長なのに対し、ディーノのエンブレムは横長であることも特徴です。大ヒットしたフェラーリ308は「12気筒ではない初めてのフェラーリ」として設計されましたが、モックアップ段階ではディーノのエンブレムを取り付けるため、ノーズ部分に横長の窪みがありました。

アルフレード・フェラーリの功績と記憶

若くして亡くなったアルフレード・フェラーリですが、彼の開発したV6エンジンは、フェラーリの歴史に大きな足跡を残しました。イモラ・サーキットの旧名称が「アウトードロモ・ディーノ・フェラーリ」であったことからも、彼の功績がいかに大きいかを知ることができます。彼の短い生涯は、多くの悲しみと同時に、自動車技術史における輝かしい一頁を刻み込んだと言えるでしょう。彼の開発した技術は、後のフェラーリ車、そしてフィアット・ディーノへと受け継がれ、現在も世界中で愛されています。 彼の名は、自動車界に永遠に刻まれています。

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