アルベルト・トンバ

アルペンスキーのレジェンド、アルベルト・トンバ：華麗なる滑りと破天荒な人生

アルベルト・トンバ(1966年12月19日生まれ)は、イタリアのエミリア＝ロマーニャ州出身のアルペンスキーヤーとして、1980年代後半から1990年代にかけて世界を席巻しました。回転と大回転で圧倒的な強さを誇り、冬季オリンピックでは3個の金メダルを獲得、ワールドカップでは通算50勝という偉業を達成。これは、インゲマル・ステンマルク、マルセル・ヒルシャー、ヘルマン・マイヤーに次ぐ史上4位の記録です(2010年12月時点)。

彼の活躍は、単なる競技成績だけにとどまりません。レース前夜のディスコ通いや激しい気性、そして劣勢からの劇的な逆転劇など、数々の逸話も有名です。その爆発的な力と、型破りな生き様は「Tomba la Bomba（爆弾トンバ）」という愛称を生み出し、人々を魅了しました。

スポーツ万能からスキーヤーへ

ボローニャ近郊で生まれたトンバは、幼少期からテニス、サッカー、ダートバイクなど、様々なスポーツに親しみました。しかし、彼の心を最も捉えたのはスキーでした。

1981年のジュニアスキー世界選手権で4位入賞。ミラノサンシーロでのパラレルスラローム大会では、イタリア代表Aチームの選手たちを破るなど、早くから才能を発揮します。17歳でイタリア代表C2チーム入りを果たし、プロとしてのキャリアをスタートさせました。

ワールドカップでの活躍と「トンバ効果」

1985年にワールドカップへ参戦。翌1986年にはランキングを62位から6位へと大幅に上げ、スキー界に衝撃を与えました。翌年には世界選手権大回転で銅メダルを獲得。そして1987年11月、ワールドカップ回転で初優勝。2日後には大回転でも優勝を果たし、その名を世界に轟かせました。

このシーズンは9勝を挙げ、最終ランキングは2位。得意とする回転と大回転に集中したことで、他の種目で得られるであろうポイントを失ったと分析されています。また、祖母からの反対により、滑降には出場しませんでした。

1988年カルガリーオリンピックでは、回転と大回転で金メダルを獲得し、スーパースターの地位を確立しました。しかしその後はスランプに陥り、1989年の世界選手権では振るいませんでした。

1991-92シーズンに完全復活。ワールドカップで9勝を挙げ、総合優勝を争うも惜しくも2位となりました。アルベールビルオリンピックでは大回転で金メダル、回転で銀メダルを獲得。

1993年の世界選手権（盛岡雫石大会）では不調に終わりますが、逆境に強い彼の姿は「トンバ効果」と呼ばれました。1994年リレハンメルオリンピックの回転では、1走目で大きく出遅れながらも、2走目で驚異的な追い上げを見せ、銀メダルを獲得しました。

1995年にはワールドカップで11勝を挙げ、ついに総合優勝。イタリア人として20年ぶりの快挙でした。これは、技術系種目に特化し、スピード系種目には出場していなかったトンバにとって、異例中の異例と言える偉業でした。

1996年の世界選手権では2個の金メダルを獲得。しかし、1998年長野オリンピックではメダルを獲得できず、その時代は幕を閉じました。同年10月3日、現役引退を発表しました。

国家憲兵と伝説の終わり

本職はカラビニエリ（国家憲兵）であるトンバ。2006年トリノオリンピック開会式では聖火ランナーを務めました。サッカー元イタリア代表のジャンルカ・パリュウカと、誕生日が近く、体格も似ていたことから、双子と例えられることもありました。

アルベルト・トンバは、類まれな才能と、型破りな生き方で、アルペンスキーの歴史に永遠にその名を刻みました。彼の伝説は、今もなお語り継がれています。

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