アルベール・ベナール

ポール＝アルベール・ベナール（Paul-Albert Besnard、1849年6月2日 - 1934年12月4日）は、フランスの画家、版画家として知られています。パリで生まれ、幼少期から芸術に触れる環境で育ちました。

生い立ちと初期の教育

ベナールの父親は彫刻家兼画家でしたが、彼が幼い頃に亡くなりました。母親もミニアチュールの画家であり、彼は両親から芸術的な影響を受けました。15歳から新古典主義の巨匠、ドミニク・アングルに絵画を学び始め、1866年には17歳でパリ国立高等美術学校（エコール・デ・ボザール）に入学。ジャン＝フランソワ・ブレモンに師事し、アレクサンドル・カバネルからも強い影響を受けました。当時のフランス画壇では、ロマン主義の画家ウジェーヌ・ドラクロワの作品が非常に人気を集めていました。

ローマ留学と画風の模索

1874年、ベナールは若手画家の登竜門であったローマ賞を受賞し、4年間、ローマの在ローマ・フランス・アカデミーに留学しました。この留学期間は彼の画風形成に重要な影響を与えました。1879年には彫刻家のシャーロット・デュブレー(Charlotte Dubray)と結婚。彼は自身のスタイルを模索し、1880年頃からロンドンで3年間を過ごしました。ロンドンでは、フランスの肖像画家アルフォンス・ルグロ(1837-1911)と出会い、イギリスの肖像画の巨匠たち、トマス・ゲインズバラ、ジョシュア・レノルズ、トーマス・ローレンスの作品を研究しました。この経験を通じて、彼は明るい色彩と人物を魅力的に描くスタイルを確立していきました。特に女性の人物画において、その才能は際立っていました。

フランス帰国後の活躍

フランスに戻ったベナールは、公共施設の装飾画も手掛けるようになり、その才能は多岐にわたりました。また、教育者としても優れた手腕を発揮し、1913年から1921年の間、在ローマ・フランス・アカデミーの校長を務めました。その後、1922年にはパリのエコール・デ・ボザールの校長に就任。彼は美術界の指導者としての役割も担いました。1912年には美術アカデミーの会員となり、1924年にはアカデミー・フランセーズの会員にも選出されました。さらに、レジオンドヌール勲章を1887年にシュヴァリエ、1903年にコマンドゥール、1921年にグラントフィシエ、1926年にグランクロワと、長年にわたり受勲し続けました。

作品の特徴と評価

ベナールの作品は、印象派の影響を受けつつも、独自の明るい色彩と洗練された筆致が特徴です。肖像画では、人物の内面まで描き出す優れた描写力が高く評価されています。また、公共施設の装飾画では、その空間に調和した壮大な構成力と色彩感覚が際立っています。彼は、当時のフランス美術界において重要な役割を果たした画家の一人であり、その作品は現在でも多くの人々に愛されています。

その他

ベナールは、フランス美術界の発展に大きく貢献した人物であり、その功績は今日においても高く評価されています。彼の作品は、美術館や個人コレクションに収蔵されており、その芸術的な価値は時代を超えて輝き続けています。

参考文献:
Noël Benoît: Sept moments de la vie de Roger Jourdain, in Le Pays d’Auge, N°3, mai-juin (2005)
Noël Benoît und Jean Hournon: Parisiana - La Capitale des peintres au XIXe siècle, Les Presses Franciliennes, Paris (2006)
Noël Benoît: Roger Jourdain, un maire de Rueil-Malmaison atypique, in Bulletin de la Société Historique de Rueil-Malmaison, N°26, décembre (2001)
Noël Benoît und Jean Hournon: Les Arts en Seine, le paradis des peintres, Les Presses Franciliennes, Paris (2004)
* Albert Besnard (1849-1934). Musée Eugène Boudin, Honfleur 2008, ISBN 978-2-902985-12-8.

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