アル＝グザート・アル＝ムジャーヒディーン

アル＝グザート・アル＝ムジャーヒディーン：ジハードの戦士たち

アル＝グザート・アル＝ムジャーヒディーン（الغزاة المجاهدين, al-ghuzāt al-mujāhidīn）は、アラビア語で「ジハードの戦士」を意味します。この軍事集団は、イベリア半島のナスル朝が、キリスト教勢力からの防衛のために、北アフリカのマリーン朝から追放されたベルベル人のゼナータ族を兵士として採用し、組織化したものです。

歴史と役割

ナスル朝は、イベリア半島における最後のイスラム王朝であり、その存続は周辺のキリスト教国との絶え間ない攻防の中にありました。その中で、アル＝グザート・アル＝ムジャーヒディーンは、ナスル朝の軍事力の中核を担う存在として台頭しました。

成立の背景

兵士の多くは、イスラム教徒の防衛を宗教的な義務と考える志願者で構成されていました。11世紀にはすでに、グザートという呼称で北アフリカ出身の志願兵がイベリア半島に現れていましたが、ナスル朝の建国者であるムハンマド1世の時代に募集が拡大され、息子のムハンマド2世によって制度化され、規模が拡大されました。

ナスル朝における影響力

アル＝グザート・アル＝ムジャーヒディーンは、次第にナスル朝の現地人軍隊の規模を凌駕するようになり、ムハンマド2世の治世が終わる頃には、1万人もの兵士を擁し、軍隊の主力として活躍しました。彼らは、グアディクス、ロンダ、マラガなどの主要都市に配置され、地方の司令官とともに、ナスル朝の政治に大きな影響力を持つようになりました。特に、アル＝グザート・アル＝ムジャーヒディーンの指導者であるシャイフ・アル＝グザートは、ナスル朝の政治において重要な地位を占めました。

マリーン朝との関係

アル＝グザート・アル＝ムジャーヒディーンは、ナスル朝と北アフリカのマリーン朝との複雑な関係の中で生まれました。兵士の多くは、マリーン朝の反体制派や反乱分子であり、争いに敗れた後にナスル朝へ避難してきた人々でした。彼らは、北アフリカから兵士を率いてきた王子やその家族に仕え続け、それぞれの独自性と指導力を維持していました。アル＝グザート・アル＝ムジャーヒディーンの中心的な拠点は、フエンヒローラに置かれていました。

マリーン朝のスルターンにとって、アル＝グザート・アル＝ムジャーヒディーンは、潜在的な脅威となる勢力を排除する手段であり、同時に、アル＝アンダルスのイスラム教徒の守護者としての役割を演出し続けるための有効な手段でもありました。一方、アル＝グザート・アル＝ムジャーヒディーン自身にとっても、ナスル朝における軍務は、安全な避難場所を確保し、フェズのスルターンを打倒する機会を伺うための手段となりました。

ナスル朝のスルターンたちは、アル＝グザート・アル＝ムジャーヒディーンの軍事力を利用することで恩恵を受けましたが、同時に、マリーン朝の反体制派の存在をちらつかせることで、フェズのスルターンに圧力をかけることも可能になりました。

衰退

アル＝グザート・アル＝ムジャーヒディーンは、急速にナスル朝の権力の中枢を担う存在となりましたが、その指導者であるシャイフ・アル＝グザートの影響力が増大するにつれて、スルターンとの対立も深まりました。ムハンマド5世の2度目の治世中である1369年から1374年の間に、スルターンはシャイフ・アル＝グザートの影響力を封じ込めることに成功し、それ以降、アル＝グザート・アル＝ムジャーヒディーンはナスル朝の支配者の直接的な指揮下に置かれ、それまで有していた自律性と政治力を失いました。

名称について

アル＝グザート・アル＝ムジャーヒディーンは、アラビア語で「ジハードの戦士」を意味します。西洋では、「信仰の義勇軍」（Volunteers of the Faith）という名称も用いられることがありますが、これは19世紀にイブン・ハルドゥーンの『キターブ・アル＝イバル』をフランス語に翻訳したバロン・デ・スレインが、この軍事集団について論じた際に使用した表現に由来します。

もう一度検索