アレクサンダー・アーキペンコ

アレクサンダー・アーキペンコ（Alexander Porfiryevich Archipenko、1887年5月30日 - 1964年2月25日）は、ロシア帝国（現在のウクライナ）のキエフで生まれ、後にアメリカ合衆国へ移住した彫刻家、グラフィックアーティストです。彼は、20世紀初頭の芸術運動であるキュビスムの潮流に乗り、独自の表現を追求しました。

1902年から1905年までキエフ芸術学校で美術を学んだ後、1908年にパリへ渡り、芸術家としてのキャリアを本格的にスタートさせます。パリでは、パブロ・ピカソやフェルナン・レジェといった著名な芸術家たちの影響を受け、キュビスムのスタイルを自身の作品に取り入れるようになります。彼は、短期間パリの美術学校に在籍しますが、すぐに退学し、自らの道を切り開いていくことを決意します。

パリでは、ウラジミール・バラノフ＝ロッシネ、ソニア・ドローネー、ナタン・イサエヴィチ・アルトマンといった、同じくウクライナ出身の芸術家たちと、モンパルナスの集合アトリエ「ラ・リューシュ」で生活を共にしました。彼らは、芸術的な刺激を分かち合い、互いに影響を与え合いながら、それぞれの表現を深めていきました。1910年以降、アンデパンダン展やサロン・ドートンヌといった重要な美術展に作品を出展し、その才能を広く知らしめました。

1923年、アーキペンコはアメリカ合衆国に移住し、新たな活動の場を求めます。アメリカでは、芸術家としての活動に加え、後進の育成にも力を注ぎます。1935年から1936年の間には、ワシントン州立大学で教鞭を執り、1937年にはシカゴにクリエイティブ・ファイン・アーツ・スクールを設立しました。これらの活動を通じて、彼はアメリカにおける美術教育の発展にも貢献しました。

アーキペンコの作品は、キュビスムの幾何学的な形態を基盤としながらも、独特の空間表現や素材の組み合わせが特徴的です。彼は、伝統的な彫刻の概念を覆し、新たな表現の可能性を切り開きました。彼の作品は、今日においても多くの人々に影響を与え続けています。

アーキペンコは、その生涯を通じて、彫刻だけでなく、絵画、版画など、多岐にわたる分野で優れた作品を制作しました。彼の作品は、世界中の主要な美術館やギャラリーに所蔵されており、その芸術的な価値は高く評価されています。彼が残した足跡は、20世紀美術史において、重要な位置を占めています。

関連人物

ユージーン・アーキペンコ - アレクサンダーの兄であり、農学者、ウクライナの政治家として活躍しました。

関連事項

ラ・リューシュ - アーキペンコがパリで生活していたモンパルナスの芸術家たちの共同アトリエ。多くの芸術家たちが集い、交流を深めました。
エコール・ド・パリ - 20世紀初頭、パリで活躍した外国人芸術家たちの総称。アーキペンコもその一人です。

参考文献

林洋子『藤田嗣治手紙の森へ』集英社〈集英社新書〉、2018年。ISBN 978-4-08-721018-7。

外部リンク

* The Archipenko Foundation アーキペンコの作品や生涯に関する詳細な情報が掲載されています。

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