アレクサンドル・アルハンゲルスキー

アレクサンドル・アンドレーイェヴィチ・アルハンゲルスキー（1846年10月11日 - 1924年11月16日）は、ロシアの著名な合唱指揮者であり、正教会の聖歌作曲家として知られています。ロシア・ソビエト連邦社会主義共和国功労芸術家の称号も保持していました。

彼の名前は、ラテン文字表記ではAleksandr Andrejevich Arkhangel'skijと綴られます。現代日本では「アルハンゲリスキー」と転写されることが多いですが、正教会の聖歌作曲家としては、「アルハンゲルスキー」という表記が一般的です。この記事では、この表記に準拠しています。

生涯

アルハンゲルスキーは1846年、ペンザのミハイロヴォ・テジコヴォ村で、農村司祭の子として誕生しました。幼少期にはナロフチャットの大聖堂で歌い、この大聖堂は後に作家アレクサンドル・クプリーンが洗礼を受けた場所としても知られています。この大聖堂は現在も残り、文化遺産として保護されています。

音楽教育は、クラスノスロボツキー神学校、ペンザ神学校で受け、16歳で聖歌隊の主唱者となりました。作曲法と和声法はN.ポトゥレフに師事し、同時期にクリュキー記号（近代以前のロシア聖歌の記譜法）による古典聖歌の研究も開始しました。

ペンザ、そしてサンクトペテルブルクで摂政を務めた後、1872年からはサンクトペテルブルクの合唱団に所属しました。アレクサンドロフスキー図書館では歌唱指導にもあたり、1880年にはサンクトペテルブルクで混声合唱団を指揮しました。彼は、ロシア民謡の編曲、古典合唱曲、現代音楽の作曲など、幅広いジャンルに挑戦し、優れた音楽的才能を発揮しました。

教会音楽の分野では、アルハンゲルスキーは、それまで少年が担当していた高音部を女性に歌わせるという革新的な試みを行いました。これにより、ロシアの宗教音楽への関心を高め、合唱団のために多くの楽曲を編曲しました。1880年にペテルブルクに来てから、彼は生涯にわたり指導を続ける合唱団を組織しました。この合唱団では、ロシア正教会で初めてソプラノとアルトを導入し、混声合唱を採用しました。

アルハンゲルスキーは、正教会の奉神礼音楽、特に聖体礼儀や徹夜祷（晩祷）に多くの作品を残しました。彼の活動時期は、ドミトリー・ボルトニャンスキーの時代から始まった、西欧化された正教会聖歌を伝統に適合させ復興させようという流れが定着した時代でした。同時代の作曲家には、パーヴェル・チェスノコフがいます。

彼の作品は、素朴で美しいメロディと和声が特徴で、ロシア正教会で広く親しまれています。日本正教会でも、彼の聖歌がしばしば歌われています。オリジナルの典礼作品や、「世界の慈悲」などの賛美歌を含め、80以上の作品を作曲しました。特に「Помышляю день страшный」は、その情熱的な表現が際立つ傑作として知られています。

1908年には、モスクワで開催された第一回指揮者会議を主宰しました。1921年10月には、サンクトペテルブルクで音楽活動50周年を祝し、ロシア・ソビエト連邦社会主義共和国功労芸術家の称号を授与されました。晩年の2年間はプラハで少年合唱団と活動し、1924年にプラハで亡くなりました。

彼は当初、プラハのオルサニー墓地に埋葬されましたが、1925年に遺骨はレニングラードに移送され、サンクトペテルブルクのアレクサンドル・ネフスキー大修道院内にあるチフヴィン墓地に再埋葬されました。

遺産

2002年にペンザ音楽学校はアルハンゲルスキーの名を冠しましたが、後に芸術大学となった際に、その名前は外されました。しかし、2021年には再びアルハンゲルスキー学校の名前となりました。2003年には、ペンザのロシア合唱・声楽文化センターの建物に、アルハンゲルスキーの記念プレートが設置されました。また、2019年には、ナロフチャットにアレクサンダー・アルハンゲリスキー博物館がオープンしました。

アルハンゲルスキーの作品は、ロシア正教会の音楽史において重要な位置を占めており、彼の革新的な取り組みと美しい旋律は、今も多くの人々に愛されています。

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